昨シーズンもベンチスタートの試合が多くを占めたとはいえ、それ以前はスターターでの出場が基本だっただけに、大金本人としても「慣れるまでは難しいところもあった」ということだが、今は「僕も年齢を重ねて、ベテランの域に入ってきてると思うので、スタートかベンチスタートかというのはあまり気にしないようにしてますし、チームでの役割を受け入れて、コートに立ってる間に自分のプレーをしっかりやろうと思えるようになってきてます」と意識の部分でアジャストできている。
そういった意識の変化は多少なりともあったにせよ、決して変わることのないものも大金にはある。それは、誰もが認める “トレインズの象徴” としての存在感だ。創設メンバーの1人として加わって9シーズン目、東京八王子のクラブの歴史を全て知る選手は大金だけ。B2昇格の歓喜も、そのB2で味わった不遇の時間も、大金は身を以て経験してきた。新たに導入されたプレーオフに昨シーズンは進むことができず、今シーズンも現時点ではプレーオフ圏外。「ここ2年くらいは沈んじゃってて、チームが良くなってる手応えはあまりない」という現状認識も、逆に2度目のB2昇格を達成したいという願いも、強い東京八王子を知っているからこそ強く持つ。
「僕のプロバスケットボール選手としてのキャリアで、最終目標はもう一度B2に行くこと。前回B2に行って、いろんなことがあったにせよ、1年で落ちたというのは事実なので、そこはすごく悔しかったですし、昇格したときの八王子の盛り上がりを知ってる分、もう一度B2に昇格して、応援してくれる人に喜んでもらいたいという想いがあります」
この日の山口戦の白星は、クラブ通算200勝の節目だった。全ての勝利に立ち会ってきたと言っても過言ではない大金は、「チーム立ち上げから今まで、いろんな人が協力してくれてる中で達成できた」と感謝の念を抱く。また、いじめのない社会を願い、“ピンクシャツデー” と称してピンク色のユニフォームを初めて着用。「新鮮でした。チームメートを『可愛いな』と思って見てました(笑)」という大金は、「副キャプテンでもあるし、年齢も上のほうなので、こういう取り組みもいろんな人が協力してくれてるからできるんだということは若手に伝えていきたい」とプロクラブの一員としての責任を背負う。
シーズン終盤に突入している中、逆転プレーオフ進出はまだ可能な位置。治療のためアメリカに一時帰国したサリバンの再来日の見込みは立っておらず、慣れ親しんだスターターの座に復帰した大金のプレーはより重要性を増していくことになる。淡々とプレーしているように見えて闘志を内に秘め、他の誰よりもチームに愛着を持つ大金は、「個人としてもガンガンプレーしていきたいとは思いますが、八王子が強くなるのが一番というところはブレずにやっていきたい」とチームのために戦い続ける。
文 吉川哲彦
写真提供 東京八王子ビートレインズ