早い段階で森川正明がインジュアリーリストに入り、シーズンが折り返してからはジャレル・ブラントリーが同じくインジュアリーリストに入った。チームにとっては故障者の存在が苦戦の一因であることは確かだ。松本も「モリさんとJBがいないのはやっぱり大きい」とその影響を認めるが、一方で「ちょっと前には（馬場）雄大もケガしてましたが、逆にそういったときに自分のプレータイムが伸びて、自分を表現する時間帯が増えて、そこで自信をつかんできたというのもある」と自らのチャンスに変えることもできた。ウィング陣の層が厚くなり、チーム内での競争も激化しているシーズンだが、初めてのB1の舞台でも不安を抱かず、難しさを感じながらも「B1でもトップのディフェンダーになりたい」と己を見失うことなく、チャレンジを楽しむことができている。B1で戦うにふさわしい選手となっていることは間違いない。

「もちろんディフェンスは僕の強みだし、ヴェルカに来てからもそこに注目されがちですが、走ることやアタックももともと得意だし、ディフェンスから自分の得意なプレーをやるというのはB1でもできるようになってきたと思います。開幕した頃はディフェンスに意識が集中しすぎたところもあったんですが、試合を重ねて慣れてきて、自分のプレーができるようになってきた。それはすごく良いサインかなと思いますね」

松本は長崎の契約第1号選手。1年間のブランクを経てトライアウトから再び始まったプロキャリアにおいて、長崎の地をバスケットで盛り上げてきた自負は強く、「B3のときとは会場の雰囲気も違うし、街を歩いてても長崎の皆さんに応援されてるのはすごく感じます」とのこと。長崎のファン・ブースターの期待に応えたい想いも日を追う毎に増している。

「選手が誰もいない状態で僕が最初に決まって、そこからB2昇格とB1昇格を達成してきて、振り返ってみるとあっという間というか、順調に来てる中で今は壁にぶつかってますが、僕らはこれまでもチャレンジに対して乗り越えてきた。今の壁も乗り越えて、B1でも『ヴェルカって強いね』って言ってもらえるように、良いチームになるだけじゃなくて強いチームになっていきたいです」

期待に応える一番の方法は勝利。厳しい戦いが続く中でも、チャンピオンシップ進出の可能性がある限り、長崎はそれを目指して戦い続け、松本はチームの勝利のために全力を尽くす。自身が今乗り越えつつある壁を、今度はチームで乗り越える番だ。

「現時点の勝率でいうと簡単な話ではないですが、チームは良くなってきているし、残り試合も少なくなってきてますが、ターゲットの30勝に届けばCSが見えてくる。諦めてる人はヴェルカにはいない。僕にとってもチームが勝つことが一番大事で、僕が活躍した上でチームが勝ったら最高です」

文　吉川哲彦
写真　B.LEAGUE