B3優勝やB1昇格の際には、長崎市の繁華街でパレードを実施。街の至る所にポスターが掲示され、ラッピング路面電車も登場した。地域での認知度が向上していることを実感するとともに、今後のバスケット熱の高まりも伊藤代表兼GMは大いに期待している。
「選手も街で声をかけられまくるって言ってますし、私でも声をかけられるくらいなので、この2年で本当に根づいたなという感じがあります。今シーズンはホームもアウェーもチケットが完売の試合が多くて、これはワールドカップのおかげでもありつつ、ヴェルカの魅力が少しずつ伝わってきているのかなと思いますし、まだまだ頑張らなきゃいけないところはたくさんあるんですが、クラブとして良いスタートが切れているんじゃないかと思います」
クラブ創設時からの4年間だけで様々な肩書を背負ってきた伊藤代表兼GMも、コーチとしてのキャリアが最も長いのは言うまでもなく、自身に適したポジションを問われると「どうですかねぇ(笑)」と苦笑いしながら、「でも、情熱の面ではやっぱりHCです。この間もU15チームにコーチングをしましたし、地元の高校生にクリニックをしたりもするんですが、すごく楽しいです」と語る。しかしながら、伊藤代表兼GMは「今生きること、今のことに集中できるのが自分の強み」と自認し、GM業はもちろんのこと、社長業からも充実感を得る毎日だ。
「向いてるかどうかはわからないですが、チャレンジに感じてますし、コーチをしてきて学んだリーダーシップやマネージメントが生かされている部分もあると思います。難しい仕事ですが、今やってることはすごく楽しくやらせていただいていて、その状況を楽しめています。次に取材していただいたときに『社長業が一番向いてる』と言えるようにしたいですね(笑)」
中学を卒業してすぐに渡米した伊藤代表兼GMの人生は、常にチャレンジがつきまとう。慣れないことにもポジティブに向き合い、その状況に楽しさを感じられることが、伊藤拓摩という1人の人間の人生を形成している。
「楽しいことを探せるのが自分の才能かなと思います。自分は楽しいというのがなければ続かない人なので、そもそもそのチャレンジが楽しいと思えなかったらやらないです。社長の話を最初にいただいたときも、最初は断ろうと思ったんですよ。自分じゃないんじゃないか、他に適した人がいるんじゃないかと。
でも、妻に相談したら『バカじゃないの』って言われて(笑)。そこで考えるきっかけをもらえて、新しいチャレンジをすることにワクワクしていきましたし、何かもっと大きなことを成し遂げられるんじゃないかということを気づかせてもらえました。もちろん、やり始めると大変ですし、ストレスも増えますし、かなりの時間を使ってますが、その中でも自分の成長を楽しめるとか、過程を楽しめるというのはHCをやりながら学んできたことでもあって、自分がそういう人間なんだなということが41歳になって改めてわかりましたね」