越谷アルファーズは現在東地区2位。もちろん、B1昇格がかかるプレーオフの圏内ではあるのだが、思いの外白星が伸びていないという印象もある。最大19点リードから逆転負けを喫した試合もあれば、ビハインドからオーバータイムに持ち込みながら敗れた試合もあり、下位のチームに連敗した節もあった。試合を重ねて安定感を増すどころか、徐々にチームがトーンダウンしているように見えたというのが、多くのファン・ブースターにとっても正直なところだろう。
しかし、年が明けると青森ワッツに2戦とも28点差という快勝を収め、1月20日・21日の愛媛オレンジバイキングス戦も連勝。特に第2戦は第1クォーターに35得点の猛攻を見せたのが効き、103-74という会心の勝利だった。まだ予断を許さないとはいえ、チームが上向く可能性を感じさせる内容だったことは確かだ。
この愛媛戦は、ジャスティン・ハーパーという得点源を欠く試合だった。開幕直後から故障者が多いチーム状況にあって全試合でスターターを務め、リーグの得点ランキング上位にも名を連ねていたハーパーを欠いたことは、他の故障者がほぼ戻ってきたとはいえ、越谷にとっては不安材料だったはずだ。ただ、そのハーパーの穴を見事に埋めてみせたのが、開幕5試合目の負傷で2カ月近く戦線離脱を強いられた松山駿。第2戦では3ポイントを9本中7本成功させ、速攻やフリースローなどでも得点を重ねてキャリアハイの35得点を叩き出した。今シーズンのハーパーの1試合平均得点(1月23日現在)が19.8点で、松山は12.5点。この日の松山の得点数は、2人の数字を足してもお釣りが来る。
アウトサイドシュートの決定力で抜群の安定感を誇る松山は、いわゆる2番ポジションでコートに立つことが多かったのだが、年明けの青森戦からはポイントガードのスターターとして起用されている。これには二ノ宮康平が未だインジュアリーリストに登録されているなど、ハンドラーの状態がまだ万全ではないという背景もあるが、「マツはどちらかというと、ボールを待ってるよりも自分で触ってるほうがリズムを作れる。シュートなのか、アタックなのか、パスなのかを自分発信で作っていけるというのは、マツにとってもやりやすいんじゃないかな」という安齋竜三ヘッドコーチの考えもあった。その点には松山自身も「ボールを持ってたほうが流れを作りやすいというのは感じます。自分の強みは3ポイントと中に切っていけるところだと思うので、1番でプレーするメリットもあるかなと思います」と同調する。
松山が欠場している間は、スコアラーのLJ・ピークにハンドラーとしての役割も頼る傾向が見られた。今主にポイントガードとしてプレーしている松山は「僕が入ったからには、そこの負担を減らせるように頑張ろうという意識は持ってます」と言い、「1番ポジションをやるにあたって、もっとゲームコントロールをする場面も必要になってくるので、勉強しながら上手くなっていきたい」と意気込む。
その姿勢は、この愛媛戦の直前にも行動となって表れた。常にチーム全体に対して「意識が全然足りていない」と厳しい目を向けている安齋HCだが、最近は選手個々に自発的に取り組む姿勢を感じ始めたとのこと。司令塔としての出場が増えてきた松山もその1人だというのが安齋HCの証言であり、松山本人も向上心が高まっていることを自ら感じ取っている。