今シーズン、島根スサノオマジックから仙台89ERSに移籍した阿部諒に注目が集まっている。25得点のキャリアハイをマークした1月1日の琉球ゴールデンキングス戦(83-81で勝利)までのスタッツを昨シーズンと比較してみると、26試合すべてにスタメン出場し、平均プレータイム(16分51秒→28分03秒)、得点(3.8→14.0)、リバウンド(3.2→3.8)、アシスト(1.1→4.5)と、飛躍の大きさは一目瞭然。さらにディフェンス、ルーズボールなど数字では測れない貢献度も高く、まさに今季の仙台を牽引する存在になっている。
しかし、この “変化” について尋ねても阿部の表情は変わらない。「少しはウキウキする気持ちがあっても不思議じゃないのでは?」と水を向けてみたら「ウキウキなんてとんでもないです」と真顔で首を振った。
仙台で自分の可能性を追求していきたい
千葉県出身。地元の市立船橋高校から拓殖大に進み、短期間ながら特別指定選手としてサンロッカーズ渋谷でプレーしたあと、島根(当時B2)に入団した。昇格したB1の舞台で最下位の屈辱を味わったシーズン、西地区2位に躍り出てCS(チャンピオンシップ)進出を果たしたシーズン。山あり谷ありの5年間にはさまざまな思い出が詰まっている。
「中でも濃いシーズンだったなあと思うのは金丸さん(晃輔・現三遠ネオフェニックス)と安藤さん(誓哉)が移籍してきた年(2021-22シーズン)ですね。あの2人のメンタリティにはめちゃくちゃ刺激を受けたし、選手としてすごく勉強になりました。金丸さんの『シュートは入ってあたりまえ』の言葉は衝撃的過ぎて忘れられません(笑)」
徐々に上向きになっていくチームを肌で感じながら『自分のやるべきこと』を考え続けた日々でもあった。その結果、ディフェンスで流れを呼び込む阿部の存在はチームに不可欠な “名脇役” として評価を高めていく。
「あたりまえですが、試合に勝つのはうれしいし、楽しいし、やりがいも感じます。チームの躍進に少しは貢献できているという充実感もありました」
ならば、その島根を離れようと決めたのはなぜなのか。決意の理由はなんだったのだろう。
「ひとことで言えば、選手としての可能性を追求していきたいと思ったんです」
28歳の自分がこれからバスケットを続けていく姿を想像したとき、「もっとプレーの選択肢を増やすことが必要だし、そのためにも今までとは違うスタイルにも挑戦してみたいと思った」という。
「仙台からオファーをいただいたとき、ウィングプレーヤーとしてこれまでの経験を活かしてほしいと言われました。仙台が今シーズン上に行くためには日本人選手の積極的なアタックが必要になる。その中心となってチームを引っ張っていってほしいと言ってもらえたことに心が動きました。自分にとっては1つの挑戦になりますが、それは自分が望んでいた挑戦でもあるからシンプルにうれしかったです」