新年の最初の試合となった1月6日のアースフレンズ東京Z戦で、オーバータイムに突入する接戦を制してブースターに白星を届けた山口パッツファイブ。今シーズンは、古巣の鹿児島レブナイズでも指揮を代行した経験を持ち、移籍初年度の昨シーズンもアシスタントコーチを兼任した鮫島和人が選手兼ヘッドコーチの肩書で指揮を執り、シーズン折り返しの段階で早くも過去2シーズンの勝利数を超えようかというところまで成績を伸ばしている。
その東京Z戦は、鮫島選手兼HCの掲げるコンセプトが見えるものだった。スターターに定着していたディアンドレ・エイブラムと重冨友希をベンチスタートに回し、ジェイレン・ケンドリックと吉川治耀をスターターに起用。さらには、今シーズンの山口で唯一スターター起用が一度もなかった川上貴一も試合開始のコートに送り出した。
この狙いを、「速いペースでやってほしかったので、吉川に合うメンバーでいきました。山口(力也)は吉川と長く一緒にやってますし、下山(大地)と川上は迷ったんですが、山口と川上は日本人選手の得点源として期待してるので、ここは吉川、山口と同じ年代の川上に託しました」と鮫島選手兼HCは説明する。また、ケンドリックに関しては「今週いきなり人が変わった(笑)。肩で息をするくらい練習もやってくれたので」とその姿勢を買ったということだ。
その結果、ケンドリックは18得点13リバウンドのダブルダブルをマークし、川上はチームハイにしてシーズンハイの22得点を挙げた。そして吉川が最も重要なオーバータイムの5分間で攻守に躍動したことは、先の記事にも書いた通り。スターターに起用されたこの3人が勝利に大きく寄与したことは、誰の目にも明らかだ。
前述したように、今シーズンの山口でスターター起用が一度もなかったのは川上だけ。特別指定選手として加わったばかりで、まだベンチ登録されていない濱田真魂を除くと、スターター未経験の選手はこの東京Z戦でゼロになった。鮫島選手兼HCが掲げるチームコンセプトは、ここによく表れている。「今日のMVPは?」と問われて「いっぱいいますね」と答えたこの東京Z戦は、鮫島選手兼HCにとっては満足できるものだったに違いない。
「日替わりヒーローを作りたいと思ってます。スーパースターがいるチームじゃないからこそ、結束力が大事。下山や上松(大輝)といった、顔が下がってる選手を奮い立たせてあげられるベテランが来てくれたおかげで、今チームはどんなことがあっても保ててるし、その中で若い選手たちが成長してきてると思うんです。富田(一成)にしても、昨シーズンあまり出場機会がなかったのに、今日も良い仕事をしてくれた。これが僕の目指すバスケットなのかなと思います。明日もスタメンは変えるつもりでいますし、これからアッと驚くような予想のつかないスターティング5も楽しみにしていただけたらと思います」