今シーズン出場したすべての試合で久保田、西田、イ デソンの3人はスターティング5に名を連ね、試合中コートに立つ時間、ベンチに座る時間を共にすることが多い。
「(西田、イ デソンとのユニットは)やりやすいです。自分が切羽詰まったときは優大も運べますし、ダッシュも運べます。自分がコントロールしつつ、優大、ダッシュに点をとってもらうっていう感じですかね。」
このユニット構成が持つ役割は、はっきりとリッチマンHCから告げられたわけではないという。
しかし三河の試合を見る限りでは、非常に説得力を感じる考察だ。
「(ライアンHCからコミュニケーションを)頻繁にとってくれたり、僕もヘッドコーチに対して質問をしたりとか、コミュニケーションを常々とっています。」
指揮官と司令塔の相互理解、その努力が新しいチームを形作っている。
ヘッドコーチだけでなく選手も大幅に入れ替わった今シーズンの三河は、それまでの伝統を残しつつ、全く新しいチームへ生まれ変わったといっても差し支えないだろう。
コミュニケーションの重要性を知る久保田にとって、新しい環境で見知った人、あるいは見知らぬ人たちと打ち解けていくことにさほど時間はかからなかったが、なかでもとりわけ懇意にする選手がいるという。
「入ってきた当初から、柏木さんとよくコミュニケーションをとっています。」
言わずと知れたミスター・シーホース、柏木真介が、強さの継承を担い奮闘している。
ベテラン自ら新たなチームメイトに声をかけて回り、歴史と未来の融合を目指す姿がその言葉からは想像された。
「そうですね。あとは…柏木さんをいじったりだとか、よくしてます。」
42歳の大ベテランはまだいじられていた。
しかも頻繁に。
その懐の深さはさすがという他ないが、もちろんただの若手のおもちゃとしてそこにいるわけではない。
「柱だと思っています。チームが悪い状況になったときに、柏木さんがみんなにこうしていこう、っていうのはすごく言ってくれるんです。みんなも多分それで安心してるんじゃないかなと思います。柏木さんはいろんな経験を積まれていて、それを練習中も試合中も僕にいろいろ教えてくださったりとか、アドバイスを毎日のようにしてくれるので、すごく助かっています。」
ポイントガードとして、チームを牽引する立場にある久保田にも大きな影響を与えていることだろう。
初めての移籍1年目にしてチームにフィットし、成長を続ける久保田。
彼にとっての三河はもう「一度は入団してみたかったチーム」ではない。
『ガチ。』で優勝を目指す、「一目置かれるチーム」の中の人なのだ。
「僕らが100%に持っていくにはポゼッションの数。まだターンオーバーがすごく多いチームなので、そこを改善できていけば、また強い三河を取り戻せるんじゃないかなと思っています。」
昨シーズンオフに大きな決断をした久保田が、シーホース三河にも多大な変化をもたらしている。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE