すごく気持ち良い……相手が嫌がっていると分かったとき、ディフェンスがすごく楽しい
移籍当初、オフェンスに不安があった野﨑零也だが、「ディフェンスはもう自信がありました。強度でもそこまで負ける気はしないとも感じていました」とすぐさま持ち味を発揮。そのディフェンスを第一に考えてプレーしはじめたことで川崎ブレイブサンダースのシステムにフィットし、オフェンスでも成果が上がっている。
ディフェンスが好きだったのかという問いに対し、「もともと大き………」で言葉を止める。ひと呼吸おいて、「大嫌いというわけではないですが、苦手でした。ディフェンスはきついです」と本音がポロリ。出身の白鷗大学はディフェンスを重視しており、そこで基礎を培ったのかと思えば、「そのストーリーは全くないんですよ」と苦笑い。学生時代は、「シュートを決めたい。ただただ、その気持ちが強かったです」というオフェンス思考の野﨑に転機が訪れたのはプロになって3年目。ファイティングイーグル名古屋から群馬クレインサンダースへ移籍し、2年目を迎えた2020-21シーズンのときだった。
「当時の平岡(富士貴)ヘッドコーチは、ディフェンスを大事にしていらっしゃったので、そのときにオフェンスだけでは、この世界で生きていけないなとすごく感じました。ルーキーシーズンのFE名古屋では、そこまでディフェンスに特化してプレーしていたわけではなかったです。なので、群馬に移籍してからディフェンスに意識を向けるようになりました」
当時はB2であり、B1と比較すればオフェンシブなチームとの対戦が多い。そこで相手を止める楽しさに快感を覚える。翌シーズンにはFE名古屋へふたたび戻るが、ルーキーのときとは違い、ディフェンスを評価されての移籍だった。相手のキープレーヤーや外国籍選手との責任あるマッチアップが増えたことも、自信につながっていた。「相手がすごく嫌がっていたり、イライラしている姿を見ると、なんて言えばいいんだろう。すごく気持ち良い…というか。相手が嫌がっていると分かったとき、ディフェンスがすごく楽しいと思えるようになってきました」という感情こそが醍醐味でもある。川崎ではタレントあるチームメイトとのマッチアップにより、練習中から成長ができている。
「トム(トーマス・ウィンブッシュ)につくことで、あれだけ伸びがある選手はなかなかリーグ内にもいないので、そこに慣れることで他の選手が相手でもディフェンスしやすいと感じられます。(藤井)祐眞さんとも時々マッチアップするんですけど、これがなかなかクセが強い(笑)。動きが読みづらいので、そこも勉強になります」
目指すは「接戦を勝ち切るチーム」
今シーズンの川崎は「相手がどんなアクションでも、どんな形で攻めて来ようと、どんなにボールが遠くにいても5人全員に役割と責任があるディフェンスシステムに取り組んでいる」と佐藤賢次ヘッドコーチは明言する。それに対し、「難しい」と選手たちは口を揃える。野﨑に解説を求めれば、「メインハンドラーに仕事をさせない。簡単にレイアップをさせないことが今のシステムであり、それを許してしまえば崩れてしまうんですけど……」と言葉に詰まるほど簡単ではない。