180度変わるようなプレースタイルで新境地を開いた青木保憲
2023年1月16日、昨シーズン途中から青木は広島ドラゴンフライズを退団し、仙台へ移籍。ワシントンやギブスのように、外国籍選手の場合はよくある話だが、日本人選手がシーズン途中に移籍するのは希有なケースと言える。「すごく覚悟のいることでもありました」と青木は言い、その決断の背景について振り返ってくれた。
「昨シーズンは12月上旬からプレータイムが減っていて、12月後半にはもうメンバー外となっていました。仙台は翔太がケガをしてすごく困っていたときであり、本当にタイミングが重なったというか、僕自身もセオさん(藤田ヘッドコーチ)と一緒にやりたいという思いもありました。ちょうど年明けの試合が広島vs仙台だったこともあり、そこでお話させてもらった時点でもう僕の心は決まっていました。お互いの需要が噛み合った感じの良い巡り合わせであり、良いご縁をいただいたと思っています」
広島でのプレータイムは平均8分10秒、コートに立てない試合もあった。しかし、移籍するや否や、仙台がスローガンに掲げる “Grind!” を体現する。常に一生懸命、泥臭くハッスルするのが青木の強みであり、新たなチームに溶け込むのにそう時間はかからなかった。
藤田ヘッドコーチは「ガードがペイントアタックして、そこからクリエイトして欲しい」と青木に要求。そもそもコントロールするタイプのポイントガードであり、シュート試投数さえ少なく、二桁得点も希だった。環境が変わり、180度変わるようなプレースタイルに不安もあったが、それ以上に新しい発見へ向かう好奇心が上回る。移籍3試合目の富山グラウジーズ戦(2023年1月21日)で早くも13点を挙げ、新境地を開いた。
「セオさんにはすごく感謝しています。シュートに行くことはこのチームのみんなが求められていることなので、アグレッシブに波のようにプレーできているときが僕たちの時間帯だと思っています。ガードである僕も、その一端を担えるようにしていきたいです」
流れが悪くなっても、「僕らの原理原則に立ち返ろう」と掲げるスローガンやテーマが選手たちの拠り所になっている。「アーリーオフェンスからアタックしながらボールを動かし、みんながアグレッシブにゴールに向かって行くこと。それが徹底できているときは悪い流れでもカムバックできています。逆に、練習とは違うことをしてしまえばターンオーバーが起き、ちょっと考えすぎて重くなってしまいます」と青木が言うように、手応えと課題が明確になっている。全員が同じページを開いてプレーできている証でもある。SR渋谷戦は2連敗したが、青木は反省点をきちんと自分たちに向けていた。
「インテンシティが落ちてしまい、僕らが当たり前にしていることができていない時間帯がありました。そこのギアをもう1回上げ、エクスキューションをどれだけ高められるかが絶対カギになると思います」
文・写真 泉誠一