田中にとって、岐阜は生まれ育った地元でもある。愛着のある土地でバスケットができること、意義のある活動に取り組めることは何よりも幸せなことだ。昨シーズンは40歳にして3ポイント成功率のタイトルを獲得。クラブを地域に根づかせるための活動が自身のパフォーマンスを向上させ、その成果でクラブがより認知されるという好循環は確かに生まれているようだ。
「こういった年齢になっても夢を持って努力すれば達成することもあるよっていうメッセージは、岐阜の皆さんに伝えられたと思います。世代を超えて愛されるチーム作りということをテーマにしてやっているので、それも良いモチベーションになってます」
今シーズンは、2歳下の杉本憲男が選手兼任でヘッドコーチに就任。長く共闘してきた仲間をサポートし、手を取り合ってより良いチームを目指したいという想いはさらに強くなっているという。
「コートに入ったら彼の言うことを聞こうというところと、彼もHC1年目で悩んでいるところもあるので、そういったときにプライベートではしっかり支えてあげたいという気持ちで、オフコートでもなるべく時間を共有しようとしてます。とにかく良いチームを作りたいという一心です」
また、若手が多い今シーズンのチームで、その代表格ともいうべき選手が高橋快成だ。大学1年生の昨シーズンはB1の三遠ネオフェニックスでプレーしたが、富田高校時代にも特別指定選手として岐阜に加わった過去がある。高橋も田中と同様に、バスケットに対する情熱と地元への愛着を人一倍強く抱いているようだ。
「オフに声をかけて僕がクラブのビジョンを話した際に『以前とは皆さんのプロ意識も変わっている。岐阜に戻って、自分がこのチームをB2に上げたい』という想いを伝えてくれました。僕らも成長してるのかなと思いますし、彼は覚悟を持って来てくれたので、足を引っ張らないように(笑)もっと頑張らないといけないと思います」
目標はあくまでもB2昇格。それも、2026年に新リーグに移行する前に果たしたいと考えている。レベルが上がる一方のB3で簡単に勝てるようになるわけではないが、地元からの期待も背負い、ひたむきにバスケットに打ち込む日々を送る。
「苦しいことばかりなんですが、苦しいことが多いからこそ小さな喜びを味わえるということは、バスケットを通じて学ばせてもらいました。今日の勝利もそうですが、1つ1つの喜びをみんなで共有したいなと思って頑張ってます。毎年毎年精一杯やってる中で、今シーズンは周りの期待が少し違いますので、非常に高いプレッシャーを味わいながら(笑)バスケットをやらせてもらってるというところで、充実してできているのかなと思ってます」
文・写真 吉川哲彦