ここ数年のB3リーグは新規参入クラブが上位争いに顔を出すケースが多く、今シーズンも福井ブローウィンズが第8節を終えた時点で首位を走り、徳島ガンバロウズも3位につけている。昨シーズン参入の東京ユナイテッドバスケットボールクラブは6位、さらには立川ダイスも7位に躍進しており、まだシーズン序盤とはいえ相当な混戦模様。一昨シーズンにB2昇格決定戦に出場したトライフープ岡山が18クラブ中17位に沈むなど、B3の競争力は格段に上がった印象だ。
創設から一定の年数が経っているクラブの奮起にも期待したいところ。2018-19シーズンの参入以降、中位と下位を行き来してきた岐阜スゥープスは、昨シーズン初めて導入されたプレーオフにあと一歩の9位。長期間8位をキープしながらシーズン終盤に息切れし、豊田合成スコーピオンズに逆転される無念の結末だった。
ただ、そのことでスイッチが入ったのか、昨シーズン得点とリバウンドでいずれもランキング2位だったアドネシー・ジョシュア・ブラマーをしながわシティバスケットボールクラブから獲得するなど、今シーズンは効果的な補強を施して臨んでいる。B1から多くの選手を獲得して厚みのあるロスターを編成した福井と既に4度対戦し、いずれも敗れてしまったものの、その他の試合は勝率5割をキープ。ここから勝率を伸ばすことは大いに期待できる。
第8節の東京八王子ビートレインズ戦は、接戦となった第1戦に勝利。かつて1シーズンB2に籍を置き、B1を経験した選手も複数いる相手に勝ちきれたことは好材料だ。チームの精神的支柱である田中昌寛も「ファウルトラブルがあった八王子さんにとっては難しいゲームだったと思いますし、僕らは相手の弱いところを突けたのかなと思います」と、的確に試合を進めることができた感触を持つ。また、3ポイントを5本中3本成功させた自身のプレーについても「シューターとして、必要なときに打って決めるという点では、満足はしてないですが1つ仕事はできたと思います」と及第点をつけた。
今シーズンのチームを、「若い即戦力の選手が加入して、若いがゆえに波はありますが、勢いに乗れば強いというのはあると思います」と田中は分析。昨シーズン悔しい思いをした分、「最低でもプレーオフ」と決意は固く、「福井さんとは4試合やりましたが、そのうちの2試合は第4クォーター途中までリードしました。プレーオフに出場すれば何があるかわからないと思ってますし、力をつけてシーズンを戦っていきたいです」と手応えも得ているということだ。
岐阜は、一昨シーズンに荒川凌矢とプロ契約を結ぶまでは、日本人選手全員が他に仕事を持つ “二刀流” だった。今もなお日本人選手の多くは平日に仕事とチーム練習をこなし、週末に試合に臨む日々。田中によれば、シーズン中は基本的にオフはない状況だという。先日41歳になったばかりの田中が、タフな環境でバスケットに情熱を注げる理由はいったい何なのだろうか。
「僕の場合、アマチュア時代から12年クラブを作ってきてプロになってますので、年齢はいってますが、バスケットで岐阜の子どもたちに夢を持たせてあげたいというのがありますし、バスケットを通じて社会に通用する人間をしっかり作りたいという想いでチーム作りをしてます。若い選手も多いので、人間的な教育というところも自分のモチベーションに変えてます」