前編『一時はバスケットと無縁の仕事に就くことも考えた』より続く
現役時代、取材先で会った伊藤大司はいつも笑顔だった。たとえばアルバルク東京で迎えたBリーグ元年。竹内譲次(現大阪エヴェッサ)、田中大貴(現サンロッカーズ渋谷)と3人で行った座談会で、場を和ませようと飛ばした渾身の?ジョークを「大司さん、それ、つまんないです」と田中に一蹴されても「なんだよう」と言いながらケラケラ笑っていた。移籍した滋賀の体育館を訪れたときは「こんにちは~」と真っ先に頭を下げ、自分の取材ではないのを知りつつ「よろしくお願いします」とあいさつしてくれた。あのときの伊藤もやっぱり笑顔だったなと思い出す。
11年に渡る現役生活の間には当然笑顔ではいられないことも多かったに違いない。GMという重責を担った今は尚さらのこと。眉間に皺を寄せ、1人で思い悩む時間が増えたのではないだろうか。
頭の中には四六時中バスケットがある
── ここからはアルバルクにおけるGMの仕事についてお聞きしたいと思います。そもそもGMとひと言で言ってもクラブによって役割は微妙に違うものなのですか。
伊藤 そうですね。もちろん大枠はありますが、GMの仕事はこれときっちり定まっているわけではないのでクラブによって違いがあるかもしれません。だから、今の僕の仕事も自分のオリジナルの部分を含めた『アルバルク東京のGM』としてお話することになります。クラブから求められているのはまずチーム編成。ヘッドコーチに始まり、選手を誰にしてどういうチーム作りをするかといったことですね。当然目標となるのは優勝ですし、優勝できるチームを作るというのが最重要であることは間違いありません。ただ、その一方でGMには『チームのカルチャーを作る』という仕事もあります。単に試合に勝てているからいい、このポジションのトッププレーヤーがいるからいい、優勝できたのだからいいというのではなく、5年後、10年後、アルバルクをどんなチームにしたいのかという長期的なビジョンも必要になります。そのためには何が必要なのかを考え、1つずつ積み重ねていくのもGMの仕事だと思っています。
── 今、チーム編成の話が出ましたが、たとえばヘッドコーチが変わるとき、ふさわしいと思われるコーチを見つけ出し、オファーするのもGMの仕事ですか?
伊藤 そうです。新たなチーム作りの上でどんなコーチがいいのか、どういうバスケットをするのかを考え、それにマッチするコーチを探すのはGMの仕事です。でも、本当に大事なのはそれから先で、コーチとはしっかりコミュニケーションを取らなくてはなりません。今の(デイニアス)アドマイティスHCとはシーズン前に「こういうチームでこういうバスケットをしましょう。そのためには選手にはこういうアプローチをしてくだい」というような話をしました。こちらからお願いした以上、自分もちゃんとチーム状態を知っておかなければならないのは当然のことです。だから、時間が許す限り練習も見に行くようにしていますし、シーズンが始まればアウェーの試合にも必ず帯同します。練習を見て、試合を見て、何かズレを感じるようなことがあればすぐにコーチと話し合いますし、僕の中ではそれが一番大きな仕事だと思っています。