立ち上がりはプランどおりではなく、「前半のオフェンスが少し詰まってリズムを作れなかった」とパトリックヘッドコーチは振り返る。「今日は勇樹も熱くなっていた」ことで重たい流れを打開し、37点をマークした富樫が勝利へ導いた。縦へ横へとドリブルでディフェンスを攪乱し、次々とシュートを決めていく。爆発的な得点力でチームを救う富樫の得点は、自らクリエイトして生まれることも多い。その一方で「今日の試合ですごく良かったのは、オフ・ザ・ボールからの得点」とパトリックヘッドコーチはチームプレーの中での得点を評価する。
「味方のスクリーンを使いながらボールをもらってシュートするシーンも多々あった。三河のように、勇樹に対してボックスワンやフェースガードしてきたときこそ、あのようなプレーが大切になる。相手が勇樹を徹底マークするのは普通のこと。ボールハンドラーとしてではなく、オフ・ザ・ボールでも得点するシステムも大切になる」
富樫自身は「37点、そしてチームが勝てたことがすべて」と述べ、リズムをつかめなかったオフェンスに対し、勝つ手段として自ら得点を獲る選択をし、勝利へ導いただけである。
「長いシーズンを通して、一人の選手が3〜40点獲ることはこれまでもありました。数試合は個人に頼ってなんとか勝つこともあると思いますけど、シーズンを通して考えればそれは難しい。やっぱりチームとして平均的にシュート数も、点数も獲っていかなければいけないと常に思っています。今日は第3クォーターの出だしで金近とディー・ジェイの積極的な良いシュートがありました。あのような強気なプレーで、チームとして良いオフェンスができていければ良いと思っています」
タフなスケジュールの中でも東アジアのチャンピオンチームと戦えるメリット
今シーズン、試合後会見でパトリックヘッドコーチが、タフな状況を日数で表すのが恒例になっている。「この難しいスケジュールの中で、29日間の中で14回目の試合」とこの日も強調し、Bリーグと並行して東アジア スーパーリーグ(EASL)がある今シーズンは試合数が多い。ケガや体調不良によって選手が揃わないことが増え、移動時間や環境の違いなど苦労が絶えない。その中において、パトリックヘッドコーチは「海外に行くことも海外のチームと対戦するのも楽しい。若い選手たちにとっても良い経験になっている」とメリットを挙げた。三河戦でも活躍を見せた小川麻斗や大倉颯太、金近廉ら若手の底上げがタイトルを獲得するためには欠かせない。富樫も前向きに捉えている。
「アジアのチームと対戦できるのは、すごく良い機会にはなっています。よりアジア全体のリーグも大きくなって、注目度が高まっていけば良いなと思います。タフなスケジュールですが1試合も消化試合がなく、常に勝つために試合をしています。試合をすればするほどチームが良くなるとも思っており、出ていない他のBリーグのチームよりもメリットはあるかな。それを良い方向に活かしていけるようにしたいです」
32日間で15回目の次戦は、水曜ゲームで群馬クレインサンダーズの本拠地に乗り込む。今週末の佐賀バルーナーズ戦が終われば、Bリーグはバイウィークとなり、EASLもない。ようやく翼を休める日も近い。
文 泉誠一
写真 泉誠一、B.LEAGUE