新戦力D.J・ニュービルとの共存も「しっかりやっていきたい」
12点を挙げた比江島は、ペイントアタックから良いキックアウトパスを出していた。アシストは1本に終わったが、その数字が伸びていれば結果は変わっていただろう。大阪エヴェッサから移籍してきたD.J・ニュービルは、これまでと変わらぬフォア・ザ・チーム精神を宇都宮でも発揮。群馬クレインサンダーズとの開幕戦は7アシストを記録。昨シーズン平均19.4点と遜色の無い活躍を見せており、比江島との共存がチームを上向かせるカギとなる。佐々ヘッドコーチはその2人に固執することなく、彼らと絡む鵤誠司の成長にも期待を寄せていた。
元来、相手が強ければ強いほど集中力が高まるタイプの比江島。FIBAワールドカップでは当然の如くスイッチがオンとなり、本来の姿を見ることができた。まだまだ進化しているのか、はたまたようやく真価を発揮したのか、シンカーボールのように読めない33歳。プロとして10年のキャリアを積み上げ、世界を破る成功体験を経て迎えた新シーズンへの意気込みを比江島に聞いた。
「3ポイントシュートの意識は、やっぱりずっとやっていきたいなというところと、DJが新たに加わり、その共存もしっかりやっていきたい。探り探りではありますが、でも変わらずに、リングにアタックすることは世界に通用した部分でもあるので、そこは引き続きやっていきたいです」
自信を持って、さらなる余白を埋める活躍が期待される。一方、ニュービルの存在により、人任せな気まぐれエースとなってしまう不安も否めない。また、渡邉裕規や遠藤祐亮ら、コート上で声を出して引っ張る頼もしい選手たちが多いことで、試合中にしゃべらなくなる。今夏の日本代表では、少しだけ垣間見られたリーダーシップ、そして3ポイントシュートを決めたあとの猛々しいセレブレーションも然り。常に感情を出してプレーすれば、自ずとスイッチをオン状態にできるはずだ。日本代表のスタイルを踏襲する宇都宮だからこそ、パリオリンピックへ向かって、いくらでも成長できる。だからこそ、まだ見ぬ姿を見てみたい。
文・写真 泉誠一