アウェーに乗り込んだ黄色い同志たちも初の1万人超えを後押し
「今日が普通。何も特別じゃない。あれが比江島慎ですよ」
日本を熱狂させたFIBAワールドカップでのベネズエラ戦(※FIBA公式YouTubeでは日本戦を含む、全試合配信中)。最大15点リードしていた相手に対し、3ポイントシュート6本を沈め、23点を決めた比江島慎が日本を救い、世界を相手に2勝目をもぎ取った。試合後、渡邊雄太(フェニックス・サンズ)が興奮気味に比江島の胸をバンバンと叩きながら称えていたのが、冒頭のコメントだ。長く見てきたファンであれば、あれが比江島慎であることは知っている。Bリーグでも、同じような姿が見られることを常に待っている。
10月14日、クラブ主管試合における1試合最多入場者数10,040人の新記録を更新したアルバルク東京ホームゲーム(※翌15日はさらに多い10,225人と再更新)。アウェーに乗り込んだ宇都宮ブレックスの熱心なファンも、その記録を後押しする。佐々宜央ヘッドコーチは、「普通のチームでは考えられない」高い占拠率の黄色い同志たちの姿を見て「震えた」。
日本代表での勇姿同様、比江島が積極果敢にゴールへ向かってチャンスを作る。第2クォーターには、青山学院大学OBとのマッチアップで魅せた。安藤周人の上から3ポイントシュートを決め、橋本竜馬を抜いて前半最後の34点目を挙げた宇都宮が4点リードで折り返す。対するA東京も、新加入のテーブス海が古巣対決に燃え、前半ですでに10点と二桁に乗せた。しかし、後半になると「まわりの選手がすごく機能していたので、なるべく邪魔しないように、コントロールにだけ意識していました」とテーブスはプレースタイルを変え、A東京が逆転に成功。第3クォーターを悔やむ佐々ヘッドコーチは、こう振り返る。
「相手のプレッシャーに対して、そこで安易なターンオーバーがはじまったところと、やっぱりペイントエリアのところ。相手のインサイド陣がペイントに侵入してきて、ガード陣もアタックしながら攻められた。第3クォーターだけで、AND1(バスケットカウント)が3回もあった。逆に、僕らはペイントエリアのシュートを決めきれず、そこで怖くなってしまったのか、本当はもっともっとペイントに侵入しなければいけないのに、そこをアタックしなくなったことで単発のショットを打ちはじめた時間帯になってしまった」
セバスチャン・サイズにバスケットカウントを決められ、続く攻撃ではさらに3ポイントシュートを許し、44-45。ちょうど比江島がベンチに下がった後の逆転劇だった。残る2本のAND1プレーを決めたのは、新加入のアルトゥーラス・グダイティスであり、レオナルド・メインデルらA東京の新戦力が機能する。ディフェンスから走られ、そしてインサイドを効果的に攻められ、A東京が主導権を握っていった。
その後も宇都宮は積極性が戻らないまま、「僕も見えていたけど途中で帰る人もいたし、そういう試合をしてしまって本当に申し訳ない」という佐々ヘッドコーチの言葉どおり、60-75と最終的に15点差でA東京に敗れ、今シーズン初黒星を喫した。「集中力が一瞬切れた瞬間が目に見えてしまった。(3ポイントシュートが主流となる)今のバスケであれば10点差がつけられても、5分間でどうにでもできる。でも、そこで集中力が切れてしまったところが、僕も含めてチーム全体として反省しなければならない」と最後まで戦い抜けなかった差が結果に現れた。