助けることで、助けられる。そんな言葉がすんなり口から出るようになったのも「自分の1つの “変化” かな」と思うそうだ。かつて血気盛んだった若いころの自分は、どんなやつにも負けない、絶対自分が1番になってやるという気持ちでプレーしていた。
「でも、それだけじゃないって気づいたときから変わっていきました。周りの力を借りて自分がいるんだと考えられるようになったんですね。だから、今は俺もめいっぱい頑張るからおまえも頑張れ。一緒に成長していこうぜ!ってね、そんな気持ちで練習に臨んでいます」
初めて指導を受けたときからデイニアス・アドマイティスHCのバスケットは「とてもわかりやすく、フィットしやすいと感じた」という。
「ひと言でいえば、自分たちの強みをどう生かすか、相手の弱みをどう突くか、そのためには何が必要か。その1つひとつがきっちり整理されていて説得力があります。もちろん、阿吽の呼吸の域に達するにはまだちょっと時間がかかるでしょうが、少なくとも自分が入ったことでガタガタになったり、ちぐはぐになったりはしていないので、ここからもっとコーチのバスケットを理解して貢献度を増していきたいと思っています」
心がけているのは『どんなときも、そのときの100%を出し切ること』だ。長くバスケットをやっていれば、体調が芳しくないとき、メンタルが落ちているときもある。橋本といえども「今日は練習に行きたくないなぁ」と思う日があるそうだ。
「でも、コートに立ったら、そのときの100%を出すというのはずっと自分に言い聞かせてきたことです。好不調はあってもそのときできる自分の100%を出す。絶対さぼらない。裏表なく真摯にプレーする。それができて、初めて周りから信用される選手になれると思っているので」
そう言えばと振り返れば、たしかに試合中に手を抜く橋本竜馬を見たことがない。味方にとってはこの上なく頼もしく、敵にとってはなんともやっかいな存在だろう。その分、もしも手を抜くことがあったら見る者を盛大にがっかりさせそうだ。
「そうなんですよ。あれ?竜馬ってそういう選手だったの?が~っかり!と思われますよね(笑)。実は数年前からバスケノートを作って、気がついたことがあれば書くようにしているんですが、まさに昨日、そのことについて書いていました!」
ちなみにこのノート、時々こっそりと読み返すことがあるそうだ。
「うわっ、俺、こんなこと考えていたんだと笑っちゃうこともありますよ。ただ、それもまた自分の成長の記録だと思っています」
今シーズン、駆け抜ける60試合の途中で、橋本のバスケノートにはどんなことが記されるのだろう。
「自分は優勝するためにアルバルクに来たので、目標は優勝しかないんですけど、その目標を掘り下げていくと、シーズンが終わったとき、チームに関わったすべての人たちとこのチームで優勝できてよかったなあと、もし優勝を逃したとしてもこのチームで戦えて本当によかったなあと言い合えるチームになることが真の目標かもしれません。シーズンを通してそういう歩みができるチームになりたいです」
プロ選手になって12シーズン、さまざまな経験を通して「自分は変化してきた」と語る橋本だが、時を経ても変わらないものがある。バスケットに向かう熱さ、誠実さ、譲れないと決めたもの…橋本竜馬が求め続け、体現するバスケットは、きっとこれからもブレることはないはずだ。
アルバルク東京 #0 橋本竜馬
「僕は優勝するためにここに来ました」
前編 https://bbspirits.com/bleague/b23101101ryo/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b23101302rym/
文 松原貴実
写真提供 アルバルク東京