変わった自分と変わらない自分
橋本竜馬が家族そろって東京に引っ越してきたのは7月中旬。早々に身体作りのトレーニングに取り組み、ワークアウトにも通い始めた。体育館に顔を出した初日、年下のチームメイトたちは、やや緊張した面持ちながらフレンドリーに迎え入れてくれたというが、それもその日限りのこと。2日目には “フレンドリー” が “非常にフレンドリー” になり、本人いわく「今ではすっかりいじられキャラになっています」。対戦するコートの上であんなに恐れていた橋本先輩を誰がいじってくるのかと聞けば「まず、ザック(バランスキー)でしょ。オサ(小酒部泰暉)でしょ。(安藤)周人もそうだし、(平岩)玄もそうだし、今は吉井(裕鷹)もそうだし…」と、ほぼ全員の名前が挙がった。
「初日にこいつはいじっても大丈夫だと思われたんでしょうね。今はみんなからの愛をありがたく受け取って、なんでそういうこと言うの~と言いながらヘラヘラ笑ってます。ほんと、まいっちゃいますよね(笑)」
まいっちゃってるわりに何だか嬉しそうなのは気のせいか。おそらくその笑顔は、良いコミュニケーションを取りながら、橋本がチームに溶け込んでいる証なのだろう。
だが、チーム練習が始まればムードも一変する。
「1日、1日の練習で自分が評価されているのを感じます」。
いい意味での緊張感の中で自分を磨けること、「そういう環境を作ってくれているアルバルク東京の組織力はさすがだなと思った」とも言う。
「スタッフも選手もチームに関わる全ての人が優勝を求めてここにいる、それがアルバルクなんだと思います。もちろん、レバンガにもプロになるために努力してきた選手たちがいて、勝利するために頑張っていたことに変わりはありません。ただ、こう言うと語弊があるかもしれませんが、現実的に優勝を目指せるチームというのはやはり限られます。アルバルクはその限られたチームの中の1つ。言い変えれば、常に優勝を背負って戦わなくてはならないチームだということです」
その中で自分が求められることは?の問いには「優勝に貢献すること」と、即答。そのあとに「経験を生かしてみんなをしっかりヘルプできる存在になりたいです」と、続けた。
たとえばポイントガードとしての仕事。今シーズン、A東京は橋本のほかにテーブス海、福澤晃平が加入し、岡本飛竜を加えた4人のポイントガードでチームをリードしていくことになった。そこでの自分の立ち位置について橋本はこう語る。
「飛竜にも福ちゃんにもそれぞれ持ち味があって、一緒にやっていて楽しいんですけど、その中で海の成長はチームにとって絶対不可欠だと思っているんですよ。海はワールドカップ日本代表の最終選考で落ちて、たぶん悔しさを持って今シーズンに臨むはずです。僕がこんなことを言うのはあれなんですが、あいつには来年のパリに行ってほしいんですよね。ここ(A東京)でパリに行ける選手に成長してほしい。そのためにも僕はあいつに刺激を与えられる選手にならなきゃならないと思っています」
刺激を与えるためには、もちろん負けてはいられない。
「そりゃそうですよ。そう簡単にやっつけられるわけにはいきません。海が成長するためには自分も成長しなきゃならない。つまり、海の成長を手伝うことで、自分の成長も助けてもらうってことでしょうか」