上江田の素晴らしいところは、吸収できるものは後輩からも吸収してきた点だ。その裏にあるのは向上心。常に「上には上がいる」という思いを持ち続け、努力してきた上江田の姿は、東京八王子にも少なからず良い影響を与えているに違いない。ホームのエスフォルタアリーナ八王子で迎えた10月6日の今シーズンの開幕戦は、B2から降格してきたアースフレンズ東京Zに80-85で敗れてしまったが、観客が全て退出した後に数名の選手がコートに戻り、シューティングに精を出した。
「富樫勇樹(千葉J)はチーム練習の後も残ってシューティングしてますし、トップレベルの選手がそうやって練習してる姿を見て、僕もやらなきゃと思ってここまでずっとやってきたので、このチームで僕がそれをやることによってみんなが少しでも変わるようになればいいなと思います。
プレータイムの少ない選手が試合後にコートに戻ってきてワークアウトをしたり、普段の練習でも早く来たり最後まで残って個人練習したりというのは、選手として上手くなりたいというのが根本にある。それが当たり前になるようにしていきたいですし、そういうカルチャーを作っていけば、自ずと強いチームが作られていくと思ってます」
1シーズンだけだったとはいえ、かつてB2で過ごした東京八王子にとっても、B3は決して楽なリーグではない。それは上江田も、「昨シーズンでいうと(ベルテックス)静岡さんはすごくしっかりしたバスケットをしていたし、上のカテゴリーでも戦えるチームが増えてきてるんじゃないかなと思います」と語っている通りだが、開幕戦のチームの出来を「35%くらい。相当低い」と上江田が評したのはチームの、そして上江田の置くスタンダードが高い分、相対的に低評価になったということも言えるだろう。失点を70点以下に抑え、100点を取るのが理想という上江田は、3ポイント3本を含む14得点という開幕戦での自身のパフォーマンスにも「11本打ったら本来であれば6、7本入る。それくらい決めていれば今日のゲームも勝てた」と納得していない。それだけ厳しい目をチームと自らに向けるのは、自信の裏返しでもある。
「かみ合えばもっと上のレベルで戦えるし、それを思うだけではなく、表現して結果に残すのが今シーズン。B3優勝を目指して戦えるチームだと思ってます。あとは僕たちがブレることなくそれを信じて、HCを信じてついていくだけ。応援して良かったな、昨シーズンと違うなと思ってもらえるようにプレーしたいです」
上江田は「キャリアが長くなれば引退もちらついてきますが、ただ消えていくだけではなく、終わるにしても何かを残して、あいつがいたから良かったと思ってもらえるような選手として終えたい」とキャリア観を語るが、40代の現役選手が珍しくなくなった今、30代後半に突入した上江田もまだまだその力が必要とされていることは間違いない。昨シーズン叶わなかったプレーオフ進出と、その先にある目標の達成に、上江田の経験値と責任感は必ず生かされるはずだ。
文 吉川哲彦
写真提供 東京八王子ビートレインズ