もちろんすべてを選手やコーチに放り投げているわけではない。
現場の人間だけでの解決が難しい場合にはすぐに対処するべく備えている。
選手とも基本的には意図的に距離を置いているが、年に2回ほど設定されている面談の場では相手の意見を汲み取り、包みながら慎重に自身の正直な考えも伝える。
タクマさんはなにもしていないわけではない。
積極的な補強によって大きな期待のかかる今シーズンだが、その目は足下と遥か彼方のどちらもを見据えている。
高望みはせず、危機感を持って。
まずは「じーんとくるような試合」を届けること。
そして去年より一つ上のステップへ進むこと。
関わる人たちの体験が変わり、着実に結果がついてくれば、そのスタイルは広く知られることとなるだろう。
それは日本のスポーツの、日本のバスケットの足りていないところを満たしてくれる。
日本代表が大躍進を遂げたワールドカップから、そんなことを渡邉GMは感じ取っていた。
「一番思ったのは、いまの選手たちはすごく試合を楽しそうにやってるなっていうことです。馬場(雄大)くんにしろ、富樫(勇樹)くんにしろ、渡邊(雄太)くんにしろ八村(塁)くんにしろ。ワールドカップはいろんな思いがあってまた違うのかもしれないですけど、普段見てて、本当に好きなんだなあ、っていうのは伝わってくるんですよね、バスケットを。だからこそあそこまで突き詰めていけるんだろうなって。日本代表でも、勝たなきゃいけないっていう使命がありながらも、楽しめている、バスケット自体を。でもそこをやっぱり選手に持たせないと、世界との差は詰まらないっていうことをすごく感じています。他の国を見ていても、やっぱり楽しんでるんで、どこも。バスケットを。
それってじゃあどこから始まるのかっていったら、やっぱり子どものときから。大人の、子どもたちへの接しかたで変わると思っていて。それはGMをやりながらも伝えていきたいところではあるんです。自分のときはすごくやらされている感もあったし、すごくプレッシャーも感じていたし、その当時の心の中は誰にも見せられないなって、いまは思うんですけど。だからこそ、そこは変えなきゃいけない。ワールドカップを見ていて、そこにつなげるのはなかなか難しいことかもしれないですけど、僕自身はそういうものが、彼らの楽しむことから始まったものが、ああいう一勝につながってるんだって、けっこう思っています。そういうものを伝えることが、前の世代を走ってきた自分たちの今後の使命というか。だから全然羨ましいとかはまったくなくて、もっとああいう選手を作り出さなきゃいけないんだろうな、という思いだけですね。今は。」
京都ハンナリーズ 渡邉拓馬GM
楽しくなければ
前編 https://bbspirits.com/bleague/b23100201tkm/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b23100302tkm/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b23100403tkm/
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE