「悔しい気持ちが一番です」
試合が終わった直後だっただけに、その想いは特に強かっただろう。長崎ヴェルカで新たなチャレンジに臨んだ2シーズン目を、狩俣昌也は黒星で終えた。
5月20・21日に行われたB2ファイナルは、レギュラーシーズン西地区2位の長崎が同1位の佐賀バルーナーズに挑む形となった。ともに来シーズンのB1ライセンスを取得しており、セミファイナルに勝った時点でB1昇格は決まっていた。
ただ、新規参入の昨シーズンに45勝3敗という圧倒的な成績でB3を制した長崎は、B2も制して意気揚々とB1に乗り込むつもりでいた。過去にライジングゼファーフクオカが2シーズンでB3からB1まで駆け上がったことはあったが、クラブ創設から2シーズンでのB1昇格決定は初のケース。それをB2優勝で飾ることに関しては、周囲の期待値も高かったに違いない。
しかし、今シーズンは長崎にとって試練のシーズンとなった印象が強い。レギュラーシーズン43勝17敗という成績は、他クラブから見れば十分な数字だが、長崎ヴェルカというクラブが思い描いていたものでなかったことも事実。ディクソンジュニアタリキを皮切りにパブロ・アギラール、近藤崚太、松本健児リオンと故障者が続出し、難しいチーム作りを強いられたことは否めない。B3よりもレベルが高いリーグとはいえ、昨シーズンのクォリティの高さを考えると、今シーズンの完成度はおそらく満足できるものではなかったはずだ。
それでも、狩俣はB1昇格という最低限の目標を達成できたことに関しては、感謝の気持ちが強い。
「なかなか順風満帆なシーズンではなく、僕自身もコンディションの問題で十分に準備ができないまま開幕してしまったんですが、他にケガ人もたくさん出てしまい、フルメンバーで戦えた試合が数えるくらいしかない中で、いろんなこともありました。ただ、その中でもバラバラにならず、目標を1つ達成できたことは自信にもなりましたし、他の選手に感謝してます」
ファイナルで敗れはしたが、これから長く続くであろうクラブの歴史の中で、今はまだそのプロローグにすぎない。bjリーグ時代の千葉ジェッツでプロキャリアをスタートさせ、長崎以前に5クラブを渡り歩いて様々な経験をしてきた狩俣も、今シーズンクラブとして得た経験が未来への重要な過程であることをよく理解している。同じ九州の、それも隣県である佐賀とこうしてファイナルで激突したことなど、あらゆる経験がクラブにとって価値のあるものになっていくだろう。
「ヴェルカが立ち上がって、その1シーズン1シーズン全てが今後につながっていくと思います。九州の中でも佐賀とのライバル関係が生まれたり、そういうストーリーは自然と出来上がっていくと思いますし、その中で自分たちが成長していければ、バスケット以上のものを多くの人に届けることができるんじゃないかと思うので、全てはこれからの自分たち次第と思って頑張っていかなきゃいけないなと思います」
もちろん、長崎をB1に昇格させることが狩俣にとってはとりわけ重要な役割だった。そのミッションを達成できたことに安堵すると同時に、達成できなかったこともある以上は決して満足してはならないということと、明確なビジョンを掲げて誕生したこのクラブにはより大きな目標が残されているということも、狩俣はわかっている。