「シーズン前半は出ない時間帯も長かったんですが、いつ出ても自分の仕事ができるように準備はしているので、後半戦に入ってケガ人が増えて、その分自分のプレータイムが増えていく中で責任感は強くなりました。セルフィッシュというか自己中心的というわけではなく、自分がしっかりボールを持つということを心がけて後半戦に入ったことで、強い気持ちを持っていれば良いプレーにつながるというところもありましたし、ちょっと弱気になったらミスが出たりチームのリズムが崩れるというのもあったので、そこは今シーズンプレーしてきた中で新たな気づきとして、来シーズンにつなげられる良い経験だったかなと思います。以前は岸本(隆一)やベンドラメ(礼生)に勝負どころの場面を預けて、自分はコートの端でミスのないようなプレーをしてたんですが、逆の立場になって改めて『自分がチームを勝たせる』という気持ちを持たないといけないと思うようになって、そこは勉強になりましたね」
琉球ではbjリーグ優勝を経験し、SR渋谷では天皇杯を制覇しているが、結果を残してきたチームだけに、いわゆるエースと呼ばれる選手が他にいたことは確か。山内も主力の1人ではあったものの、「勝ったというよりは、勝たせてもらった。優勝したことは嬉しいけど、結果的に俺は何をしたんだろう」という認識だった。
しかし、三遠は低迷から脱却すべく、新しい一歩を踏み出したばかりのチーム。山内も、自身が周囲に影響を与え得る立場であることを意識し、それが奮起の源にもなっている。
「今までは中心選手ではなかったので、発言はあまりしてこなかったんですが、今は年齢も上のほうで、自分の発言や行動でチームは変わるものなんだなということに気づかされました。メンターとして、後輩たちに伝えなきゃいけないものをしっかり伝えていきたい。自分自身も今の成績には満足してないですし、もっとやれることを証明したいです。充実感がすごくあるシーズンなので、これからもっと頑張りたいという気持ちになってます」
道半ばの三遠にとっては、残された4試合も重要な成長過程の一つ。特に第35節は今シーズン最後のホームゲームであり、相手は残留争いの渦中にある新潟アルビレックスBB。川崎戦の2日間について「スタートで出てトーンをセットする役目が全くできなかった」と反省を口にする山内は、全力で臨む決意を示す。
「自分たちはまだまだできると思ってますし、自分たちの力を全然発揮できないままシーズンが終わる感じです。来シーズンにつなげられるように、残り4試合をどう戦うかが大事になってくる。チームとしても、一プレーヤーとしても存在価値を高められるように戦い抜きたいです。次はホームゲームですし、相手は死に物狂いで来ると思うので、出だしからしっかり戦って、ファンの皆さんに2つ勝利を届けられるように頑張ります」
「正直、個人的には後から出ていくほうがすごく楽ではあるんですけど(笑)」という山内だが、スターターを任される今はその責任を全うすることも強く意識し、メンターとしての責任感と相まって、そのプレーには強い意志を感じさせる。「誰かがやってくれる、誰かが決めてくれるではなく、1人ひとりが当事者意識を持って、自分の仕事を徹底する」ということを自身の背中で示そうする山内は、勝つ喜びを知る者としてではなく、勝つチームに不可欠な存在として、三遠を導いていく。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE