7シーズン目にして、B3リーグは初めてプレーオフを開催している。レギュラーシーズンの成績は岩手ビッグブルズが1位となったが、5位の横浜エクセレンスまで5ゲーム差しかなく、実際に横浜EXはプレーオフで4位の鹿児島レブナイズを連破。2戦先勝方式の短期決戦では、順位はあまり参考にはならない。
3位でクォーターファイナルのホーム開催権を得たベルテックス静岡も、6位の東京ユナイテッドバスケットボールクラブに苦戦。4月21日の第1戦に先勝することはできたが、前半に17点ビハインドを背負う難しい展開を強いられた。そして翌日の第2戦も、前半は同点。第4クォーターのオフィシャルタイムアウトの時点で11点リードを奪い、残り1分50秒の時点でも10点リードしていたが、その後に猛反撃を受け、残り5秒で2点差にまで迫られた。
この試合で特に活躍が光ったのは山田安斗夢だ。東京Uがセカンドユニットをコートに送り込んだ際にゾーンディフェンスを敷いてきたことから、「レギュラーシーズンの最後のほうから、自信を持って打てている」という3ポイントを「ノーマークになったら思いきり打とう」と積極的に狙い、6本放って4本成功。第2クォーターには連続で炸裂させ、やや劣勢に回っていたチームを勢いづけた。
そして残り5秒で2点リードに迫られ、静岡がタイムアウトを取った後の場面。ファウルゲームを仕掛けてきた相手に対し、フリースローレーンに立ったのが山田だった。「気持ちが高ぶってる分、軽く打ってもボールが飛ぶ」感覚があったという山田は1投目を外してしまい、そこで頭をよぎったのがこの試合と同じ沼津市総合体育館で行われたさいたまブロンコス戦。勝負どころでのフリースローを2本とも外してしまい、結果敗れてしまった試合だ。
しかし、「お客さんの声援や、ベンチからの『大丈夫』という声で気持ちを落ち着かせた」山田は2本目を成功させ、3点に広げたリードを守りきって勝利。前日に続く連勝で、静岡はセミファイナルに駒を進めることとなった。クラブとしてはB3参入初年度の2019-20シーズン以来となる声出し応援が解禁となったことも、山田を後押ししたと言っていいだろう。この重要な試合で、山田は20得点を挙げる活躍を見せた。
山田は、Bリーグが幕を開けた2016-17シーズンに地元クラブの鹿児島でプロデビュー。今シーズンも含めたプロキャリア7シーズンのうち、5シーズンまでをB3でプレーしてきた選手だが、2019-20シーズンには当時B2の広島ドラゴンフライズで、コロナ禍によってシーズン打ち切りになったとはいえB1昇格を経験している。
今の静岡にはB2はもちろんのこと、B1でのプレー経験もある選手が在籍しているが、昇格を経験したことのある選手となると限られる。その意味では山田の存在はチームにとっても大きな意味を持つのだが、山田自身は広島のB1昇格に貢献した実感が薄く、その経験を特に意識してはいないようだ。