チャンピオンシップ出場へのマジック点灯後、「やっぱりどこかプレッシャーもありました」と森井は言い、経験不足が露呈していた。新潟戦を迎える前、森井キャプテンは「まずチャンピオンシップのことは一旦忘れて、目の前の相手にどう戦って行くかにフォーカスしよう」と足元を見つめるように促す。今シーズンを通して、「毎試合目の前のことを考えて戦ってきたからこそ連勝でき、チームとして良い方向に向かってきました」と積み上げてきた原点に戻ったことで横浜BCらしい勝利を飾り、悲願のチャンピオンシップ出場をたぐり寄せた。
3年間築いてきたことを開花させるチャンピオンシップ
初戦のクォーターファイナルは、川崎ブレイブサンダースとの神奈川ダービーになることも決まった。「これまで天皇杯とホームゲームで勝つことはできたが、アウェイゲームでは3回とも負けている」相手に対し、青木ヘッドコーチは自信をうかがわせる。
「(昨年11月30日)最初の試合を38点差(60-98)で敗れてから、次のホームゲームでカムバックし、勝利することができた(81-78)。最後の2連戦は敗れたが、河村選手がいない中でもしっかりと戦えており、相手に嫌な印象を与えられたと思う。チャンピオンシップが神奈川ダービーとは、素晴らしい舞台になった」
森川も同様に、「今シーズンは川崎とは良い勝負ができており、今までのシーズンではなかったこと。自分たちの成長を感じられており、自信を持ってチャンピオンシップに臨みたいです」と楽しみにしている。森川、森井、須藤の3人は横浜BCに移籍してきて3年目。パトリック・アウダと河村勇輝、キング開も同時期に入団している。森井がこの3年間を振り返る。
「本当に勝てない時期もありましたし、最近のゲームでもやっぱりなかなか勝てなくて本当に苦しい時期が続きました。でも、横浜BCを大切に思ってくれたファンやブースター、スポンサーらいろんな方々とともに、今日は新しい歴史を作ったと思います。ここからはもう何も失うものはないと思っており、チャレンジャーとして全力戦っていきたいです」
リーグ勝率8番目、最後にチャンピオンシップ出場を決めたチャレンジャーが、3年間で築きあげたことをチャンピオンシップで開花させる。
今シーズンの優勝を決めるファイナルの舞台は横浜アリーナ。今シーズンはチャンピオンシップ出場を目標に掲げていた。しかし、それが具現化したときから、「チャンピオンシップで勝ち抜くこと」へ上方修正したことを青木ヘッドコーチは明かす。「横浜をホームにするチームだからこそ、最後のファイナルはやっぱり強みになる。横浜の名を背負って戦っており、その舞台に立てればこんなに上出来なストーリーはない」と上を目指すだけだ。
4月2日に全治4週間程度のケガを負った河村勇輝は、万全の状態でチャンピオンシップを迎えるための準備をしている。仲間たちがさらなる戦いの舞台を用意してくれた。
「日本一を目指せるチームは8チームしかなく、その場に出たくても出られないチームがたくさんいる中で、そこを目標に戦わなければ本当に申し訳ない気持ちもあります。日本一になるためのスタートラインにやっと立てたなっていう感じです」
若い選手が多い横浜BCにとって、レギュラーシーズンの残る6試合でまだまだ成長できる。気を緩めることなく、目の前の相手にフォーカスして戦って行くことが、はじめて臨むチャンピオンシップへ向けた最高のシミュレーションになるはずだ。
文・写真 泉誠一