長年チームを支えてきた選手が次々と活躍「横浜BCを象徴するそんなシーンだったんじゃないかな」
Bリーグ元年の2016-17シーズン。横浜ビー・コルセアーズを率いる青木勇人ヘッドコーチは、ブースターの前で何度も頭を下げていた。そして、「次こそは…」と勝利を誓うも勝ち星に恵まれず、シーズン途中で契約解除。チームも残留プレーオフに敗れ、その年の最後の試合となった入替戦へ。当時B2だった広島ドラゴンフライズになんとか勝利し、B1残留を決めた。しかし、その後も残留争いが続く。
「おそらく数年前の横浜BCを見ている人は、この状況を想像できなかったと思う」と青木ヘッドコーチは、ブースターたちの気持ちを慮った。継続は力なり、信じるものは救われる。「横浜BCを支え、あきらめなかった人たちの気持ちが、今この場に私たちを連れてきてくれた」とブースターとスポンサー、そして身を粉にして選手を支えるチームスタッフなどなど多くの方々に青木ヘッドコーチは感謝の言葉を続けた。
「みんなでここまで歴史作ってきた。ここで今、ひとつの歴史を作れたんだな」
残留争いに後がない新潟アルビレックスBBにリードされる展開だったが、武器とするディフェンスで巻き返し、88-80で勝利。遅れて、中地区3位のサンロッカーズ渋谷が、信州ブレイブウォリアーズに逆転負けした一報が届く。この結果、チャンピオンシップ初出場を決め、会場は祝福ムードに包まれた。
第4クォーターだけで3ポイントシュート4本成功、16点を挙げた森川正明が逆転の立役者となった。今シーズン開幕当初は先発で起用されていた森川だが、「チームに勢いを与えて欲しい」と青木ヘッドコーチは期待し、ベンチスタートに変更。「若手選手を支える立場になり、声がけやプレーでチームを引っ張っていくことを今シーズンはすごく意識してきました」という森川の姿勢が、劣勢な状況でもあきらめることなく戦う文化を築いてくれた。
逆転勝利したこの試合は、特に最後の10分間は「今までチームをずっと支えてきた森井(健太)選手や須藤(昂矢)選手のディフェンス、そして森川選手の最後の得点は横浜BCを象徴するそんなシーンだったんじゃないかな」と青木ヘッドコーチは感慨深い。
マジック点灯後「やっぱりどこかプレッシャーもありました」森井健太
河村勇輝らケガ人がいたこともあり、チャンピオンシップ出場マジックが点灯してからなかなか勝てないもどかしい日々が続いた。「そのときにいろんなヒーローが現れてくれた。それが今、私たちにとっては強みになっている。河村対策だけではなく、彼がいないときも対戦相手はいろんな対策をしてきた。そのストレスやプレッシャーが自分たちを強くしてくれている。むしろ、今はチャンピオンシップが楽しみ」と青木ヘッドコーチは苦しかった状況を前向きに捉え、まだまだ続く新たな戦いが待ち遠しい。
移籍組でチャンピオンシップ経験者は森井、森川、チャールズ・ジャクソン、千葉ジェッツで優勝した赤穂雷太と少ない。また、ジャクソン以外は、いずれも主力として活躍してきたわけでもない。2018-19シーズン、新潟で青木ヘッドコーチとともに中地区1位通過でチャンピオンシップを経験した森井は、当時をこう振り返る。
「ルーキーシーズンであり、プレータイムもある程度はもらっていました。でも、そのときは五十嵐(圭)選手(群馬クレインサンダーズ)や柏木(真介)選手(シーホース三河)といった日本を代表してきたポイントガードの控えであり、今とは全然立場もチームとしての在り方も違いました。その2人の存在は、すごく勉強にもなりました。今、キャプテンとしてコート上でもオフコートでも選手たちとの接し方は、そのときの経験がすごく活かされています」