プロアスリートにとって『若い』とは、いくつのことを指すのだろうか? Bリーグに多い、大学卒業後にプロへ進んだルーキーは22歳。しかし、WBCで世界一となった侍ジャパンを見れば、ピッチャーの佐々木朗希は21歳。最年少20歳の高橋宏斗は決勝のマウンドに立ち、マイク・トラウトとポール・ゴールドシュミットから三振を奪った。昨年のワールドカップでも18歳、スペインのガビをはじめ、20歳前後の選手が次々とゴールを挙げて新時代の息吹を感じた。今夏、バスケのFIBAワールドカップで沖縄にやって来るスロベニア代表のルカ・ドンチッチは、16歳のときにスペインでプロデビュー。19歳でNBA入りし、24歳ながらすでにスターである。他競技や世界を見渡せば、22歳はもう若くないのかもしれない。
プロとなってトップレベルを吸収するのは、やはり早い方が良い。特別指定があるBリーグでは在学中の大学生から、ユースチームの一貫した育成により高校生や中学生など若年層に間口が広がった。大学を退学し、または文武両道でプロになるケースも増えている。それだけBリーグが認知され、選手やその親を納得させられるだけの環境が整ってきた証でもある。
そのパイオニアとして、横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝がリーグを席巻する今シーズン。「自分も負けないように、勇輝が活躍しているからこそがんばれています」とコメントを残した昨年11月、小川麻斗は日本体育大学の一員として関東大学オータムリーグを戦っていた。福岡第一高校時代の仲間である河村を追うように昨年12月23日、小川は特別指定ではなく、千葉ジェッツとプロ契約を結んだ。
4月1日の琉球ゴールデンキングス戦で、はじめて先発を任される。重責を背負って戦い抜いた小川は、「どちらが勝つか分からない試合展開の中で、最後に勝ち切ることができたことが本当にチームにとってプラスになります。琉球とは天皇杯でも厳しい戦いでしたし、今日は原(修太)さんがいない中でも勝てたことが良かったです」と89-85でチームを勝利へ導いた。
前半終了間際、小川は連続3ポイントシュートを決め、42-40と逆転の立役者となった。「いつでも出られる準備は常にしています。コーチに信頼されるようにディフェンスからがんばったことが、今回のプレータイムにもつながったのかなと思います」という心構えは学生時代から変わらない。そのディフェンスでは、コーチングスタッフが準備した琉球の岸本隆一のデータをもとに、「3ポイントシュートだけを無くすことに意識していました」と言い、1本しか許していない。しかも、その決めたシュートは小川がベンチに下がった後だった。パトリックヘッドコーチは「まだ勉強中」と述べており、ディフェンスでの信頼はまだ得られていない。小川自身も理解している。闘志を全面に出し、前からプレッシャーをかけてくれた岸本のディフェンスから「学ぶことも多かったです」と、試合を通して貪欲に吸収している。