「サイズが小さいチームなので、リバウンドやフィフティーフィフティーのボールをいかに自分たちのものにするかというのが大事になってくる。貪欲にボールに食らいつくというのは練習中から意識していることで、それが今試合でも出せていると思います。シーズンの初めは自分の持ち味をなかなか出せなかったんですが、やり続けていくうちに自分に求められていることは明確になっていって、それを追求していった結果、地道に続けてきた結果が今のプレータイムの獲得につながっていると思います。
年末にホームで西宮ストークスと試合をした後に2日間のオフがあって、ちょうど年が明けたタイミングでもあったので、自分にもっと何かできることはないか、コーチ陣から求められていることをどうやったら遂行できるかということを考え直して、そこからもう1回自分の中で整理して取り組んでいけました。その後のアウェーの越谷アルファーズ戦の後にオールスターのバイウィークがあったんですが、ディフェンスでどれだけボールマンにプレッシャーを与えられるか、どういう状況でもチームに良い流れを持ってこれるようなプレーができるかを考えて、また気持ちを整理して後半戦に臨むことができた。そこがきっかけだったかなと思います」
愛媛に敗れた第2戦も、榎田個人のパフォーマンスは良かった。得点は4点だけだったが、その4点は第3クォーターに同点に追いつかれたところからの連続得点。その前後にはブロックショットやリバウンド、スティールも記録するなど、ハッスルプレーでチームを勢いづけた。
「第3クォーターにペースが落ちてしまったというのは昨日と似たような状況で、そこをどうにかして変えないといけないという思いでコートに入ったので、アグレッシブにいこうと思ったのがその4点につながったのかなと思います。ただ、グレートなチームになるという点で遂行できなかった部分があり、2300人を超えるお客さんの前でプレーオフを決める勝利を届けることができなくて、すごく悔しい結果になりました」
榎田自身は、プロになって以降では今が最も充実感を得られている。しかし、B2優勝とB1昇格を目標としている以上、チームはより一層のレベルアップが必要。榎田も、そこに貢献したいという意識が強い。
「コートで表現できる時間が増えてきてからは充実感は増してきてますが、まだまだ満足できる状況ではない。プレータイムをもらえるから満足するのではなく、まだ向上心を持って、自分に求められていることをもっと追求して、もっと良いパフォーマンスができるように日々の練習からステップアップしていかなきゃいけないと思います」
ところで、開催中のワールドベースボールクラシック(WBC)で日系人として初めて日本代表のメンバーに入ったラーズ・ヌートバーが大きな話題になっているが、その日本名が榎田達治であることもメディアでは盛んに取り上げられている。しかし、榎田はその事実を知らなかった。知らないということは、チームメート等からもまだイジられていないということだ。
「WBCをやってるのは知ってるんですが、今週末の試合にフォーカスしてたので、そこまでは知らなかったです(笑)。SNSで見た限りではすごく活躍してる選手なので、今それを聞いて、その選手に負けないくらい頑張らないとなと思いました」
ヌートバーは1番打者としてチームの牽引車となっている。榎田も先頭に立って走り回り、チームを引っ張る存在になれば、長崎のB1最短昇格は現実のものとなることだろう。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE