第25節を終えた時点で、長崎ヴェルカは33勝14敗の西地区2位。勝率は7割を超え、プレーオフ進出も間近に迫っているが、開幕前の期待値を考えると物足りなさも感じる。もちろん、カテゴリーが上がったことで安易に昨シーズンの成績と比較することはできないものの、B3で残した45勝3敗という成績のインパクトは強く、今は苦しんでいる印象を受けるのも確かだ。
その第25節も、もがくチームを象徴するような展開になった。3月11日の第1戦は前半に17点をリードしながら、徐々にその点差を詰められ、第4クォーター残り39秒にはついに同点。狩俣昌也の3ポイントで再びリードして事なきを得たが、薄氷の勝利だった。
そして翌日の第2戦、やはり前半に15点リードを奪ったにもかかわらず、今度は第3クォーターのうちに一度逆転を許し、その後は接戦。第4クォーター残り46秒に再びリードされると、それをひっくり返すことができず、2点差で敗れる結果となった。この試合に勝てばプレーオフ進出が決まるところだったが持ち越しとなり、もどかしさも感じられる。
そんな中で、シーズン後半に入ってから出場時間を伸ばしているのが、2シーズン目の榎田拓真だ。伊藤拓摩GM兼ヘッドコーチ(現・クラブ代表)にその実力を認められて入団が決まったが、プロキャリアは近畿大4年時のインカレで負った大けがのリハビリからスタート。開幕には間に合ったものの、プロのレベルに慣れるのに時間を要し、選手層の厚い中では目立つ存在とまでは言えなかった。
今シーズンも、前半戦は出場機会が少なかった。前田健滋朗HCによると「プレシーズンの滋賀レイクス戦で非常に良いディフェンスをしていて、チームに良いエネルギーをもたらしてくれていた」とのことだが、レギュラーシーズンに入るとそれを発揮できずにいた。
変化が見られたのが、Bリーグオールスター開催に伴うバイウィークの期間。前田HCはこう証言する。
「その頃に、彼自身がどういった部分でチームに貢献できるかというのを見つけ始めたのかなと思います。ディフェンスで相手の重要な選手を止めて、オフェンスではトランジションやカッティング、リバウンドでチームの流れを作るということを少しずつやってきて、それによってプレータイムが伸びてきました。試合に出られないときも練習からコンスタントにやってきたから、今につながっていると思います」
もっとも、榎田自身によればきっかけはバイウィークの少し前からあったそうだが、自分の武器が何であるかを考え、日々の練習から積み重ねてきたことが結実しているという認識は前田HCの証言とピッタリと重なる。