「こんなことを言っても誰も『そうだよ』とは言ってくれないと思うんですが、カーディングの段階で向井(昇、横浜EX代表)さんが『小豆沢でやるならユナイテッドだ』とか調整してくれてるんだろうなって思っちゃうんですよ。そういうところでも人とのつながりを大事にしてくれてるのかなって。もちろんたまたま小豆沢になったのかもしれないんですが、来たときにファンの皆さんとか選手だけじゃなく、フロントやボランティアの方にも温かく迎え入れてもらって、そういう場を作っていただけて本当に感謝してます。僕らはここで一生懸命頑張ってきた時期があって、今回たくさんの人に見てもらえたことがご褒美というか、本当に良い縁だなと思います」
新しい一歩を踏み出す節目のシーズン、年明けに45歳となった宮田には記録的なトピックも待ち受けていた。12月10日のアウェー戦の試合終盤、相手の岩手ビッグブルズは北條永遠と鈴木琥太郎をコートに送り込んだ。2人はユース育成特別枠の中学生。宮田は30歳差のマッチアップを経験したのである。この年齢だからこそ実現したことであり、もちろんBリーグ以前にも前例はない。
コートに入る2人を握手で迎えた宮田は「僕は常に歳の差がある人たちと試合をさせてもらってるんで、そこまで特別な想いはないです」とは言うものの、「誰であっても僕より若いので(笑)、伝えられるものがあれば伝えたいし、逆に刺激ももらいたい。彼らに限らず初めて会った選手とは交流を持ちたいし、一緒にリーグを作る仲間なので、何かしらコミュニケーションを取って切磋琢磨していきたいですね」と大局的な視点でこの事実を受け止めている。これも、様々な経験を重ねてきた宮田ならではの境地と言っていい。
「一緒にリーグを作る仲間」という意識は、チームメートとなれば当然ながらさらに強くなる。実は、この前節のホーム岩手戦で筆者が上田雅也を取材した際に、宮田の存在の大きさを語る上田の言葉を、たまたま同室でケアを受けていた宮田が聞いていたという出来事があった。無言で立ち去ろうとしたにもかかわらず、ケアを担当していた田村亜有トレーナーに「めちゃめちゃ照れてるから」と暴露(?)されてしまった宮田だが、後輩たちからそういった敬意を受けていることも自覚しつつ、一選手としての謙虚さものぞかせる。
「歳が歳なので、みんな『あの人はすごい』と思っちゃってるところがあるんですよ。でも、やってることはみんなと一緒だし、言ってることも一緒。もちろん何か良い影響を与えられれば嬉しいですが、遠慮せず同等に、同じチームメートとして見てほしい。一緒にふざけるし、バカなこともするし(笑)、横並びで1人の選手として見てもらえればと思ってます」
横浜EXに敗れたことを「アンジェロ・チョルが出られなかったというのもあるし、僕と齋藤(豊)がもっとコンディションが良ければというのもあった」と宮田は振り返る。あくまでも東京Uの戦力として戦い続ける姿勢は、若手のそれと何ら変わることはない。
「もっとタイムシェアをしなきゃいけないし、プレーオフになると同じ相手と最大3試合あるので、全員でエナジーを出して勝てるようにしたい。どこが勝っても不思議ではない中で、最後はチーム力。ユナイテッドのチーム力を見せられるように頑張ります」
古巣では齋藤とともにNBDL3連覇を果たし、B3優勝も経験した。プレーオフ進出を間近に控え、宮田の力は今こそ東京Uに必要だ。
文・写真 吉川哲彦