当時アイシンアレイオンズでプレーしていた長澤健司が小豆沢体育館に凱旋したのは昨年3月のこと。昨シーズン限りで活動を終えたアイシンとともに長澤も現役を退いてしまったが、東京エクセレンスが拠点を横浜に移してまだ2シーズン目とあって、過去に小豆沢をホームとして戦ってきた選手・スタッフはまだまだBリーグに多く残っている。
B3リーグにも目を向けているファン・ブースターであれば、あるクラブのことを思い浮かべるに違いない。早水将希ヘッドコーチを筆頭に、多くの選手・スタッフがかつてエクセレンスの一員であった東京ユナイテッドバスケットボールクラブだ。第20節を終えた時点での順位は6位。新規参入の4クラブの中では最も良い戦績で、今シーズン導入されたプレーオフへの進出に着実に近づいている。参入初年度から十分な戦力を揃えた中、B2にも2シーズン所属したエクセレンスで場数を踏んできた選手・スタッフの経験値も存分に生かされていることは確かだろう。
その彼らも、昨シーズンの長澤に続いて小豆沢に凱旋する機会が訪れた。2月24日・25日は、今シーズンの横浜EXが小豆沢でホームゲームを開催する2節のうちの1つ。その対戦相手が東京Uだった。東京Uホーム開催の同カードが組まれていない今シーズンは、これが唯一の対戦であることも付記しておきたい。
クラブ創設に尽力し、アマチュアクラブ時代からその象徴ともいうべき存在だった宮田諭は、この日を心待ちにしていた。東京Uで新たなチャレンジをスタートさせたが、12年もの長きにわたって在籍した古巣との対戦を、離れたはずの小豆沢で迎えたことにはやはり特別な感慨がある。完全なコンディションではないながらも、11月に発生した故障からの復帰は間に合い、コートに立つこともできた。結果は連敗してしまったが、それが思い出の深さを帳消しにすることはない。
「エクセレンスのメンバー、特に田口(暖)や西山(達哉)とマッチアップするのが楽しみでやってきたので、小豆沢に2日間たくさんのお客さんが入ってくれて、率直に楽しかったです。緑ばかりで埋まってるのがアウェーな感じがしなくて(笑)、それが自分たちにとって幸せなことだったのを思い出しました。緑の人たちが騒いでるのを見てうっかり喜んでしまったりもして(笑)。試合に負けたのは悔しいですが、勝ち負けはつきものなのでそれはそれとして、本当に貴重な2日間でしたね」
小豆沢に慣れ親しんでいた分、アウェーチームの一員として乗り込んできたことには違和感があった。冒頭で紹介した長澤もベンチの位置などに戸惑ったというが、宮田も「これは冗談でも何でもなく、ロッカールームを出てトイレに行こうとしたら、目の前にあるのに習慣で勝手に左に曲がってて(笑)」と、一度体に染みついたものを拭い去ることは難しかったようだ。思い入れの強さゆえに、今回小豆沢に凱旋できたことを宮田は “運命” の一言で片づけようとはしない。