廣瀬HCは「今日に関しては、自分がコントロールできないことはどうにもならない、コントロールできることに集中しようということを伝えました。そこはグッとこらえてやってくれていたと思います」と評価したが、伴馬自身は「チームも僕も遂行力の追求がまだ足りてなくて、『これをやってください』と言われたことをできていないこともある。そこは成長しなければならないと思います」と反省を口にし、こう続ける。
「勝ちたい気持ちは本当に強かったです。新年だし、新・八王子をこれから見せていこうという気持ちがありました。相手はトップチームだけど、ここはホームなんですよ。相手がどこでも、ホームは守らないといけない」
この「ホームを守る」という意識は、地域に根差したチームでプレーする選手が強く持つもの。特に伴馬にとって、大学時代の4年間を過ごし、舞い戻ってきて2年目になる八王子は本当に大切な場所なのだ。
「八王子のためにというのは、もう間違いないです。一番お世話になった地域。ホストファミリーもいますし、日本全国で6年過ごした場所は他にないので、本当に自分の実家みたいです。『実家どこ?』って言われたら『八王子です』って答えますね(笑)。だから、このチームをなんとかしてあげたいんですよ」
帰化したことも、日本という国に対する愛の強さの表れ。日本に来たことで伴馬は人として磨かれ、そのことに対する感謝の気持ちが非常に強い
「日本は自分の人生なんですよ。数えたら、人生の半分が日本。生まれた所よりも慣れちゃってますし、生まれた所に帰ると僕が外国人みたいになっちゃう(笑)。日本のおかげで、人間としていろんなところが成長したので、本当にありがたいなと思います。感謝しかないです」
日本人の心を持ち、責任感も強い伴馬は、東京八王子に加わって2シーズン目だが、副キャプテンも務めている。廣瀬HCは「延学・拓大・川崎という、他の選手が持っていない経験でチームを引っ張ってほしいし、日本語も英語もできるので、ボーカルリーダーになってくれればチームが良い方向に行くと思ってます」と期待を寄せ、伴馬も「僕が上手くケミストリーを作っていきたい」と決意。日本で学んだ協調性をこのチームでも発揮しようとしているところだ。
「コートに立つのは5人。1人だけが勝ちたい気持ちを持っていても、他の4人が自分のことばかり考えていたら上手くいかないと思います。スポーツ選手は毎日活躍できるわけじゃないし、チームのために5人で同じ考えを持ってやっていかないといけない。僕は本当に勝ちたい気持ちはめちゃめちゃ強い。でも、1人だけじゃ絶対できないです。ケミストリーもチームメンタリティーもまだ足りてないと思いますので、そのために僕も100パー以上の力を出して頑張っていきたいです」
取材を受けるといつも最後に「ちょっと日本語変なんですけど」と言って立ち去る謙虚な男だが、「~しなければならない」という表現を当然のように使いこなせる人物の日本語が変なはずはない。日本のあらゆるものを吸収しながら、バスケットボールに人一倍のパッションを注いできた伴馬は、自身も言う通り「アフリカから来たサムライ」。今シーズンB3にも新設されたプレーオフを目指すチームにとって貴重な戦力であることは間違いないが、それ以上の何か大切なものをチームに、地域に、ブースターに、そして日本のバスケット界にもたらしてくれる存在でもある。
文 吉川哲彦
写真提供 東京八王子ビートレインズ