2020-21シーズンにオンザコートルールが改められた現在のBリーグでは、外国籍選手2人と同時起用できる帰化選手の価値が非常に高くなっている。多くのクラブがアドバンテージを得るために帰化選手を求め、その需要に応えるように帰化選手の数も増加の一途。その存在が日本代表の強化の一端を担っている現状もあり、ブースターの間でも、日本でのプレー歴が長い外国籍選手に帰化を期待する声が上がり、政府官報を毎日のようにチェックする人まで存在する。
B3リーグに関しては若干事情が異なり、帰化選手枠の他に留学実績選手枠と帰化申請中選手枠というものがある。それに該当する選手は帰化していなくても帰化選手とほぼ同等の扱いを受け、前者については日本の高校や大学でプレーした実績があれば、その枠で登録することができる。市場価値の高い帰化選手は必然的にB1やB2に目をつけられるため、絶対数が増えているとはいってもB3リーグまではなかなか回ってこないが、留学生は毎年必ずどこかの高校に迎え入れられるとあって、留学実績選手枠を活用するクラブはこれまでも少なくなかった。
昨シーズン、その枠を活用したクラブの1つが、岩手ビッグブルズからジュフ・バンバを獲得した東京八王子ビートレインズだ。バンバは、2010年にセネガルから来日して延岡学園高の留学生となり、インターハイとウインターカップの優勝を経験。拓殖大学に進学し、卒業後も日本に残って川崎ブレイブサンダースと岩手でプレーしてきた。16歳での来日から、既に13年が経とうとしている。
そのバンバが、昨年7月に日本国籍を取得。名前をジュフ伴馬に改め、今シーズンからは帰化選手としてプレーしている。前述した通り、実質的に帰化選手と同じ扱いでプレーしてきたため、伴馬の帰化でチームに改めて大きなメリットがもたらされるわけではない。最も重要なのは、この事実がジュフ伴馬という1人の人間にとってこの上なくハッピーであるということだ。
ただ、今シーズンは伴馬にとって少々難しいシーズンになっている。オフの間に、家族の体調不良により一時セネガルに帰らなければならず、日本に戻ってきたと思ったらケガをしてしまい、開幕に間に合わなかった。
これはもちろんチームにとっても痛く、今シーズンから指揮を執る廣瀬慶介ヘッドコーチは、「たらればですが、彼がいたらアンドレ・マレー(開幕後に契約解除)が活きていたという、違う未来が見えていたかもしれないですし、正直そこの部分のズレはありますね」と、チーム作りに影響があったことを認める。12月に今シーズン初出場を果たすまで、取れるはずのアドバンテージが取れなかったことは、黒星が先行する今の成績に多少なりとも響いている。
何より伴馬も、帰化選手という自身の存在価値を心得ていただけに、「チームの立ち上げに、僕も責任がある」と語る。
「人生何が起きるかわからないし、選手だからケガは絶対に出てくる。でも、コーチのプランに僕も入っていたと思いますので、そこは僕の責任。僕がいない間、コーチがやりたかったことはできなかったと思います」
1月13日、東京八王子はリーグ首位を走るベルテックス静岡とエスフォルタアリーナ八王子で対戦。1試合平均得点が80点台後半という静岡を67得点に抑え、ディフェンス面では伴馬がスターター起用された成果があったように見える。しかし、得点が伸びなかったことで結果的に東京八王子は敗戦。伴馬は9得点9リバウンドと一定の数字を残したが、チームを勝利に導くには至らなかった。