「この2年間で本当によくなっている。頭もとっても良い選手なので、決めたカバレージを間違えるようなミスは少ない。でも、天才的なオフェンスでフラストレーションが溜まってしまうと、ディフェンスに影響が出るときがある。しっかりと集中してやるべきことができているときの彼は、ディフェンスもよくできている」
SR渋谷戦では前半で3つのファウルを犯した。そのいずれが、ディフェンスを破られたわけではなく、ヘルプに行ったときに手が出てしまっただけ。「生原(秀将)さんに手を出すなと注意され、まだまだ学ばないといけないのは信州のディフェンスを見ればわかると思います」と謙遜したが、後半はファウルすることなく守り切っている。コーナーまで深く攻め上がるマークマンに対し、誰よりも早くディフェンスに戻る姿に意識の変化を感じた。
2シーズン前に在籍した富山グラウジーズはオフェンシブなチームであり、「(浜口)炎さんのときは自由にというか、本当に好きなようにやらせてもらって自分の今できる力を教えてもらいました」と天才ぶりを発揮。昨シーズン、ディフェンシブな信州へ移籍。富山で開花させてもらったオフェンスがあったからこそ、「自分の中でもっとうまくなりたいという気持ちがあり、マイケルさんの下でオフェンスのシステムやディフェンスの徹底さを学んでいます。本当に考えてもいなかったカバレージや、ディフェンスのシステムを教えてもらって、いい感じに成長できてきているかなと思います」という決断は間違えではなかった。
「信州に来てディフェンスを学べているのは、自分のバスケット人生にとっても本当に大きなことです」
気持ちを制御できず、ゲームに集中し切れないことも多々あった。拓殖大学を中退し、プロの道へ進み5シーズン目を迎える24歳。「マイケルさんのおかげで人として成長もできていて、精神的にも安定してきています」と岡田は話していたが、「そのプロセスを今………見守っている形です」と勝久ヘッドコーチは言葉を濁す。
岡田にとってひとつ年上の前田について、「怜緒は勢いに乗ったときは、今日みたいにがんばってくれます。僕も怜緒も精神的な面が、2人とも課題なのかなとは思いますけどね。でも、ちょっと僕の方がそこは成長できているかな」と笑う岡田の言葉に、勝久ヘッドコーチの心労を察する。この危ういコンビに対し、コート上でしっかり手綱を引く熊谷の存在は大きい。「本当に航さんはスタッツに残らなくても僕らの精神的なリーダーです。自分や怜緒がゲームに集中できていなかったら、絶対に呼んで集中させてくれます。本当に航さんには助けてもらっています」と岡田は感謝する。
スタッツやショットチャートを見れば分かるとおり、男子日本代表と同じアナリティック・バスケットボールが信州のスタイルだ。岡田、前田が精神的に成長し、熊谷が勝たせるポイントガートへと一皮剥ければ、候補ではない日本代表に近づくはずだ。モズリーとマーシャルを欠いている今こそ、マシュー・アキノの覚醒にも期待したい。
文・写真 泉誠一