今シーズンの序盤は素晴らしい数字だけが先走り、河村らしいプレースタイルではないと感じていた。河村自身も、「今はセカンドユニットに任せられる状況が本当に増えてきているので、スタートも全力でプレーできていると思います」と仲間たちに託しながら、本来の姿を取り戻す。殻を破った新スタイルが浸透し、チームを勝たせるポイントガードとしての理想像に近づいてきた。
即戦力として期待されるハマの “ザッキー” とともに還元するチャンピオンメンタリティー
平成時代、“ザッキー” の愛称は石崎巧と相場が決まっていた。時は流れ、元祖ザッキーは “大先生” として大活躍中である。令和も5年目を迎えた今年、その名を継承するバスケ選手が現れた。大先生と同じ東海大学出身の松崎裕樹が、横浜BCと契約。「今、チームは勢いを持って戦っていると思いますが、新年から自分もそのメンバーにエントリーされるということで、持ち味である速さや3ポイントを活かし、チームに勢いを与えられるようにがんばっていきたいです」と抱負を語る。試合後に残ったブースターへ向け、「ザッキーと呼んで欲しい」とアピールし、東海大学そしてプロの大先輩を継承する。ユース育成特別枠としてすでにデビューを飾った18歳の平岡勇人も、同じく名字の後ろを取って「オカ」という自らも馴染みのないニックネームで海賊船に乗り込んだ。
1年後輩の河村と同じく、福岡第一高校から東海大学へ進んだ松崎。竹田謙GMは、今シーズンの東海大学でのキャプテンシーを評価する。松崎は、何度も日本一になった経験を横浜BCに還元する思いは強い。
「これまで日本一になったときは、誰ひとりセルフィッシュな考えを持つことなく、本当にチームのために何ができるかを常に考えて日頃の練習を積み重ね、大会に臨んでいました。ルーキーなのでアグレッシブにプレーしたい思いはありますが、試合に出る出ないは関係なく、自分本意の考えにならずチームのために、練習や試合中に何ができるかを考えながら取り組んでいきたいと思います」
ゲームキャプテンを担う河村も、「やはり勝ちグセっていうのは本当に大事なこと」と話し、勝者のメンタリティーでチームを引っ張っている。
「横浜に来て3シーズン目ですが、負けグセがずっとついているような状況でした。でも今、勝ち方が分かるようになると、どんな展開でも焦らずに自分たちのやるべきことを遂行できるようになっています。今は5連勝中(※12月30日現在)で、やっと自分たちの勝ち方が見えてきつつあります。高校や大学でチャンピオンとして学んできた勝ち方を、チームとして落とし込んでいきたい。これから強豪との対戦や、逆に自分たちよりも勝率が低い相手にしっかり勝って行くことが大事になってきます。あとは雰囲気作りのところで、どれだけ結果が出ても慢心にならず、常にチャレンジャー精神を持って戦うからこそ、やっとその土台に立てる舞台だと思っています」
勝ち方を知る盟友・松崎の存在は大きく、「勝つために必要なメンタリティーを分かっています。彼もビーコルにとってすごく良いスパイスになってくれると思うので、チーム全体で誰一人がリーダーシップを取るとかではなくてチーム全員で作り上げていきたいです」と河村は続け、飛躍の年を越えて結果を求める2023年がはじまった。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE、泉誠一