仙台はファンの並ならぬ熱意によって支えられている。
昨シーズンまでの平均観客動員数は、4年続けてB2のトップだった。
B1での戦いに大きな期待が込められる一方で、Bリーグ初年度の苦い記憶も頭をよぎる。
応援する気持ちが強いからこそ、そしてバスケットの厳しさも心得ている長年の支援者だからこそ、まずは『残留』を望む声も少なくないという。
「シーズン前からもいろんな関係者の方々から『残留目指して頑張ってください』とか、そういうお言葉をもらうことが多いです。でも、プロとしていろんな方々からサポートを受けながらやっている以上は、優勝を目指すべきだと思っています。残留するのは、あくまでも優勝を目指した結果だと思うので、そこを目指すわけではありません。」
藤田が見据えるのは仙台の新しい歴史だ。
決して過去の焼き直しなどではない。
そして目標とする場所へたどり着くための武器は、彼がこれまで培ってきたものの全てだ。
「バスケットのコンセプトは根本的には変えていません。まずはチーム全員でディフェンスを頑張って、オフェンスでもチームでいいシュートを打てるように取り組んでいくことをテーマにしています。ディフェンスは今のところすごく頑張れていて、失点とディフェンスレートが確か2位とかなんですよね、今は。(11月16日時点)ただやっぱりオフェンスで点数が取れないところが課題です。相手の強度が上がってきたときになかなかボールをもらえなかったりとか、オフェンスができなかったり。それと、相手がスカウティングしてきて、やっぱり(状況判断の)上手な選手が多いじゃないですか。基本はファイトオーバーをするけど、選手の判断でアンダーとか(変えてくる)。いろんな判断の要素が出てきたときに、ちょっとまだ対応しきれていなくて、そういった技術の差は今のところ感じています。それは少しずつ練習してよくなっていければなと思っています。」
ディフェンスレートとは、100回守るうちにどれだけ失点するか、というスタッツ の一項目だ。この数字が低ければ低いほど、ディフェンスのクオリティが高いとされる。
「ディフェンス」を信条とするチームは数多あるが、実際に結果が伴うチームは多くない。
藤田にとってのチームディフェンスは、おそらく彼の核心、能力の輪の中心だ。
これまでよりも厳しい戦場に挑む藤田の、そして仙台の輪。それはその中心からどこまで広がっているのか。
ガラリと環境が変わる昇格チームが境界の見定めに苦しむのは当然で、一定の期間が必要となるだろう。
その決定を終えたとき、仙台の戦いは次の局面へと進むのかもしれない。
「特にステージが上がって感じたのは、一人一人のストレスレベルが少し上がった気がするんですよ。ストレスなのか、言葉があってるかはわからないんですけど。去年は感じなかった体育館の雰囲気の違いとか、お客さんの数とか。相手がもしかしたら去年より大きく見えたりするのかな、とか、そういう感覚はあります。そういう試合をこなしていく上で、一人一人がストレスを抱えた状態でも、チーム全員が同じ方向を向いて戦い続けられるようなチームになっていければなと思っています。どのチームとやっても臆せず怯まず、闘争心を持って試合で勝ちにいけるようなチームになってほしいです。」
仙台89ERS 藤田弘輝ヘッドコーチ
能力の輪
前編 https://bbspirits.com/bleague/b22121301sers/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b22121402sers/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b22121503sers/
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE