前編「ヘッドコーチ業とは『方向性と決断。そして人を動かすマネジメント』」より続く
長崎ヴェルカが誇る日本一のスタッフ陣
長崎ヴェルカがB3リーグに参入したとき、選手よりも土台を固める充実したスタッフ陣を迎えたチーム作りが印象深かった。32歳の前田健滋朗ヘッドコーチが、安心して指揮を執ることができるのも頼もしいスタッフ陣の存在が大きい。
「(伊藤)拓摩GMが素晴らしい人たちに声をかけ、ヴェルカで働きたいと集まったことがすごく良かったです。クラブのビジョンを拓摩GMがしっかりと伝え、それに対してやり甲斐を感じるとともに、このクラブで成功を収めたいという意思を持って集まったスタッフ陣こそ我々の強みです」
アシスタントコーチのジャワッド・ウィリアムズ氏とヒル ライアン氏は選手を経て、長崎でその手腕を存分に発揮しはじめた。現役時代のウィリアムズ氏と前田ヘッドコーチは、アルバルク東京で高みを目指してきた。NBAでの経験も踏まえ、「彼だけが持っている特別なものがあり、そこを私にもクラブにも伝えてくれています」と助けてくれる。29歳と若いライアンコーチだが、「コミュニケーション能力に長けています」と前田ヘッドコーチは全幅の信頼を寄せる。東京大学出身、アナライジング・コーチの磯野眞氏は豊富なデータを駆使し、長崎のブレーンとして大きな存在となっている。昨シーズンまで長崎の一員としてプレーしていた弓波英人氏は、インターンコーチとして新たな挑戦がはじまった。
「情熱を持ってハードワークし、それぞれが持っている武器を余すことなくチームに還元をしてくれているので、本当に助かっています。まだスタートしたばかりのヴェルカですが、しっかりと前に進めているのも彼らの貢献があるからこそです」
コーチ陣とともに「日本一のスタッフ」と前田ヘッドコーチが自負するとおり、経験豊富な人材が長崎を支えている。ヘッドマネージャーの宮本望氏は、創設まもない栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)から10年間チームをサポートし、日本代表でも活躍。アシスタントを務める小野貴大氏とは横浜ビー・コルセアーズ時代ともに働いており、阿吽の呼吸で円滑にチームをまとめる。練習や移動など細かい気配りでマネジメントを担うマネージャーのおかげで「ストレスなく、本当に助けられっぱなしです」と前田ヘッドコーチが力を発揮できる環境を作っている。
ディレクター・オブ・スポーツパフォーマンス中山佑介氏はクリーブランド・キャバリアーズで、NBA選手たちの能力を最大限に発揮してきた経歴の持ち主。 アスレティックトレーナーの高橋忠良氏、福江真唯アシスタントトレーナーとともに、60試合+プレーオフの長いシーズンを勝ち抜くためのパフォーマンスを発揮させる。長崎が誇る日本一のスタッフ陣が前田ヘッドコーチの脇を固め、「彼らの貢献がヴェルカの足跡になり、正しい方向を進めています」とあらためて感謝していた。