古巣の新潟といえば、森井と青木HCはその新潟でもともに戦った間柄だ。青木HCが横浜BCに戻ってきた昨シーズンから再びタッグを組んでいるわけだが、他の選手よりも付き合いが長い分、互いを良く理解している。今シーズンはキャプテンも務めているが、7月の新体制会見の際に青木HCが語っていたのは、竹田GMらとの話し合いで自然と名前が挙がり、オフ明けの最初の練習で円陣を組んだ際に森井が真っ先に掛け声を出したのを見て「本人にもその自覚がある」と判断したということ。「彼の苦労も成長も見てきた」という青木HCは、森井に絶大な信頼を寄せている。
「彼はメンタルの浮き沈みがないし、当事者意識と周りを巻き込む力があって、それがプレーにも表れている。どの場面で出しても自分の仕事をしようとするし、オフコートでも意外と面倒見が良くて周りを見ている。そこに期待しました」
互いを理解していることは、チームビルディングにも生かされる。青木HCは、新潟戦の直前に放映されたローカルテレビ局の番組で「選手とは世代が違うので、話がスベることが多い」と漏らしていた。それについて本人は「雰囲気作りのためにスベってる部分もある。コミュニケーションのテクニックです(笑)」と弁明していたが、森井は「僕は勇人さんのことをわかってるからいいんですが、特に若い選手はどうリアクションしていいかわからないみたいです(笑)」と実情を明かしつつ、その裏にある青木HCの想いを代弁する。
「勇人さんが横浜で一番勝ちたいと思っている。その勝ちたい気持ちに全員が向くために、時には厳しく、時には和やかにというか、楽しさの中にも厳しさがあるというのを表現してくれてると感じてます。選手がやりやすいようにしてくれるのはありがたいですし、良い関係性の中でチーム作りができてるんじゃないかと思います」
新潟時代の2018-19シーズンには地区優勝を経験し、当時アソシエイトコーチの肩書を背負っていた青木HCからは準備の大切さなど多くのことを学んだという森井。「そのときは先輩方に連れて行ってもらったという感覚」と振り返るが、4シーズン後の現在は「自分が横浜をチャンピオンシップに連れて行く」という覚悟で取り組み、「勇人さんと2人で、チームを良い方向に導いていけたらと思います」と新潟で得た貴重な経験を横浜BCのために注ぎ込む。バックアップにとどまらない森井の貢献は、ここからより大きな意味を持ってくるだろう。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE