今シーズンの横浜ビー・コルセアーズ、というよりはBリーグ全体のブースターがこぞって河村勇輝に注目していると言っても過言ではない。大学生活に2年で別れを告げ、プロ転向を表明したのが今年3月。夏の間に日本代表の一員として国際試合も経験し、初めてBリーグでフルシーズンを戦う今シーズンは、開幕から得点・アシストともに2ケタを連発して話題をさらっている。アシストランキングは他の追随を許さず独走中。オールスター投票の中間発表でも名だたるスターを抑えて得票数トップと、21歳にして完全にBリーグの主役の1人だ。
チームスポーツであるバスケットは1人のスーパースターの力で勝てるほど甘くはなく、横浜BCが劇的に強くなったと言うにはまだ早いのだが、少しずつとはいえ地力が上がっているのも確かだ。第3節には昨シーズンのプレーオフチームである名古屋ダイヤモンドドルフィンズに1つ土をつけ、第6節にはリーグで唯一連覇を経験しているアルバルク東京も撃破。天皇杯3次ラウンドでは大会3連覇のかかった川崎ブレイブサンダースを、残り1秒の河村の3ポイントで破っている。混戦の様相を呈している中地区で、上位争いに割って入る可能性は十分にある。
今シーズンの横浜BCは、選手11人の少数精鋭体制にシフト。その裏には個々の責任感を高める、練習の密度を上げて全員を試合に絡ませる、といった竹田謙GMの目論見がある。したがって今シーズンはベンチスタートの選手の働きが勝敗に与える影響も大きくなるのだが、その意味でここまでの森井健太の仕事ぶりはもっと評価されなければならない。出場した55試合のうち31試合でスターターを務めた昨シーズンも1試合平均5.3アシストで8位にランクインしているが、河村のバックアップに回った今シーズンもアシストは多く、河村の逆転シュートで信州ブレイブウォリアーズを1点差でかわした第5節も9分35秒の出場で7アシストをマーク。チームに対する森井の貢献度の高さについて、河村は感謝の気持ちが強く、一選手として刺激も受けているようだ。
「オンコートでもオフコートでもチームをまとめてくれて、いろんな自己犠牲をしながらチームのために動いてくださっているのを間近で見ているので、健太さんがこういう結果を残しているのは自分も嬉しいです。バックアップにこういう選手がいると、自分もスターターとしての責任を果たさなきゃいけないなという気持ちになりますし、お互いに高め合える存在だと思ってます」
得点とアシストを量産できる河村にはオフェンスのイメージがつきまとい、相手のハンドラーに密着マークする森井はディフェンスに特化した選手と見られがちだ。事実、森井自身も「ディフェンスに関しては譲れないというか、自信を持っている部分」と自負をのぞかせるが、ゲームコントロールを任されるポイントガードとして、オフェンス面でも貢献できているという感触は試合を重ねるごとに強くなっているという。