「失うものがないのに何をチビってんの? もう少し思いっきりやればいいのになっていうところが、まだまだある。もっとビビらずにプレーできるように、彼らとしっかとりコミュニケーションを取って良くしていきたい」
チーム改革だけではなく、大野ヘッドコーチのコーチングスタイルもガラリと変わっていた。激高するタイプではないが、氷のような眼差しで睨む姿は逆に恐ろしかった千葉時代。優勝しなければならなかった昨シーズンまでとは違い、「CSに向けてとか言っていられるようなチームではない」というのが現状だ。メンタルから鍛え直し、細部にこだわる大野ヘッドコーチは、「必ず収穫と反省がある試合を毎回しながら、60試合を終えたときに充実感など何かを得られるようなチームに向かってみんなで歩んでいきたい」と柔らかい表情で今後を見据えていた。
「もっともっと強い三遠になるためにも今はチャンス」佐々木隆成
B2熊本ヴォルターズから獲得したガードの佐々木隆成。熊本で3シーズンを過ごし、昨シーズンは平均8.1点をマーク。攻撃型ポイントガードとしてB1で早くもその実力を発揮し、前節のFE名古屋戦に続き、SR渋谷戦でもシーズンハイに並ぶ18点を決めた。
三遠へ移籍してきた当初、「B1がどういうレベルなのかが分からずに入りました。新しく改革するチームの中でチャレンジしたいという気持ちとともに、どこまでできるのかという不安ももちろんありました」という心境だった。移籍に対する独自規準は、「自分をどう成長させてくれるかどうか」。他にもオファーをもらったが、三遠を選んだ決め手となったのが大野ヘッドコーチの存在である。
「最初はB1のレベルが分からない中で、練習中もあまり自信を持ってプレーすることができなかった時期がありました。そこで大野ヘッドコーチから『もっとできる』という声がけをしていただいて、それを自信に変えて今はプレーできています。チームとして大きく改革したことで、僕が成長できる環境も整っているかなと感じたのが、移籍を決めた要因です」
2018-19シーズン、天理大学の佐々木は特別指定選手として、大阪エヴェッサからキャリアをスタートさせた。新天地でふたたび同じチームになった元大阪の大村将基スキルコーチは、「ものすごく自分のプラスになっている大きな存在です。相手チームに沿ったスキルを教えてくれますし、メンタル面なども相談に乗ってくれます」とよりどころになっている。
これまではガードとしてパスを先行していたが、「最後はボールを持ってお前が打つんだ」と大野ヘッドコーチがマインドチェンジさせ、その期待に応えはじめている。新たなキャリアを積みはじめた26歳にとって、すべてが変わる今シーズン。佐々木も、三遠も成り上がれるチャンスである。
「ケガ人は多いですけど彼らが戻ってきたときに、今までよりもっともっと強い三遠になるためにも、今はチャンスだと思っています。それは僕だけではなく、みんなも思っているはずです。このまま試合は続きますけど、ずっとファイトし続けてがんばっていきます」
14試合を終えた時点での自己評価を問われた佐々木は「50点くらい。もっとできる」と伸びしろも感じていた。
「どんな状況でも、チームが勝たないといけないと思っています。自分が活躍するしないに関係なく、チームを勝たせるような動きができるように、そうすれば100点に近づいて行くと思います」
文・写真 泉誠一