刺激という意味では、前述したように出場機会を競い合うライバルが増えたことも、長谷川にとっては良い材料となりそうなもの。鎌田にはパスセンスと日本人離れした身体能力があり、松山は第6節の時点で3ポイント成功率とフリースロー成功率がランキング1位、そして駒沢は昨シーズンのB2日本人得点王という肩書を引っ提げてやってきた。ただ、「彼らを常に見ながら学んでいく部分はある」とその実力を認めつつ、33歳の長谷川はどちらかというとチーム全体を見渡している。
「フレッシュな選手が入ってきて、僕もベテランの立場になってきていますが、プレータイムを譲るという気持ちは全くないですし、強いチームは誰が試合に出ていても仕事ができる。チームとしてかなり良い流れができてきているんじゃないかと思います。その中で、ケガは僕以外にも出てくると思うんですが、そういうときにいかに他のメンバーがカバーするか。そうやって越谷のバスケットができていくと思います」
まずはチームがどうあるべきかということを考え、その中で個々がどう働くかということを意識するのは、経験豊富な選手らしい思考と言えるだろう。特別指定選手2人も含めて15人のフルロスターを揃えた今シーズンの越谷は、故障者の有無にかかわらずどの試合も3人がベンチ登録を外れることになるが、「ユニフォームも着られない、遠征にも来られない選手もいますが、彼らは彼らでチャレンジしている。彼らの分も頑張らないと」と長谷川はチーム一丸を強調する。
もちろん、「プレータイムを譲るという気持ちは全くない」というコメントからもわかるように、自身の働きでチームに貢献する意識も長谷川は強く持っている。佐賀戦の同点3ポイントも、この日の3連続3ポイントも、チームが難しい状況に立たされていたからこそ、長谷川の強い気持ちが結果に結びついた。桜木SVCが信頼を寄せるのも、長谷川の勝負師としてのメンタリティーをよく理解しているからなのだろう。
「シュートは自信があるので、フリーになったら打たなきゃいけないですし、逆境の中で決めるのは気持ち良い。それだけの練習もしてますからね。プレッシャーになるのは当たり前なんですが、それを楽しむことはできていると思います」
なお、この日の1本目の3ポイントで長谷川はBリーグ通算2000得点を達成した。試合後には昨シーズン宇都宮ブレックスを頂点に導いた安齋アドバイザーのチャンピオンリング贈呈セレモニーがあり、「この日に2000点の節目を迎えたのも良かった。今週末決めようと思ってました。周りがうるさいんですよ、『あと3点、あと3点』って(笑)。そのプレッシャーに昨日は負けちゃいました」と笑顔を見せたのだが、実はBリーグ以前も含めた通算記録は把握していないのだそうだ。調べたところ、ルーキーイヤーの2012-13シーズンは当時のJBL2の記録が残っておらず、NBDL所属になった翌シーズンから昨シーズンまでの通算得点が3376得点。2013-14シーズンは668得点を叩き出しており、ルーキーイヤーも同程度の得点を挙げていれば4000得点をクリアしている可能性はある。JBL2のスタッツデータを持つマニアックなファンの出現が待たれる。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE