── FE名古屋の試合を見ていると、ビッグマンも含めてスピード感のある機動性の高い選手が多いなと思っているんですよね。それが川辺HCの目指すチームのスタイルなんでしょうか。
そうですね、ディフェンスでスイッチも多くなってきているし、基本的にジョナサン(ウィリアムズ)もボールプッシュしてハーフラインを越えて持ってこれる選手の一人だと思っているので、ここがもっと慣れてきたときに、ジョナサンが運んでるときでもガード陣がいいスペーシングでディープコーナーまで走れるとか、そういう徹底もまだまだだと思うんだけど、そういうことのできる、オフェンスディフェンスともにアジリティのあるフットワークの軽い選手が来てくれてるし、そういうバスケットをしていきたい。しっかりボールムーブして全員が点が取れて、ていうところがいいんじゃないかなと思っています。
── バスケットの戦術的な部分とはまた別に、川辺HCが目指しているものとしてお伺いしたいのは、最近のインタビューなんかでもよくおっしゃっている「ダブルゴール」。勝利と人間的な成長の両方を目指していく。そういうのはどういったところで学んでこられたんですか。
学ぶというよりも、栗野譲(島根スサノオマジックAC)って、三菱(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のときの僕の先輩で一緒にやってたんですけど、最後、彼が引退するときに僕がちょうど豊通(現・FE名古屋)のアシスタントコーチをやってて、他のチームと悩んでたところを「先輩頼みます。一緒にやってくださいよ」って言うて、来てもらったんですよ。で、そんときにやっぱりジョウさんけっこうコーチングも勉強してて、そのダブルゴール・コーチングの本の翻訳とかもしてるんですよ。それでジョウさんといっつもその話になってて、そこで教えてもらったり、そこで学んで。目標が一つっていうよりかは勝ち負け以外にも意味があったりとか、僕たちの頑張りっていうのはそれだけじゃないと思うし、そういう意味でどうモチベーションを持っていくのか。なんのために僕たちがティーチングとコーチングをしていくのか、って考えていくと、やっぱりそっちのほうが真っ当な指導なんじゃないかなってすごく思って、そこからそういうことを意識するようになりました。
── 選手の反応はどうですか。とにかく勝ちたいっていう人もいるのかな、って思うんですが。
まあでもみんなよく言うんですけど、優勝するチームは1チームで、じゃあそのチーム以外は1年間あかんかったのか。でもやっぱりそうじゃないと思うし、それは自分たちの長い人生の中の1ページで、やってきたことが全て意味なかったってことは絶対にないと思うので。そこに意味がないと、勝ち以外のもう一個のゴールがないとダメなのかなって思ったから、その二つ。常に持っとかなあかんのかなと思ってます。
── どっちも相乗効果があるような気がするというか、人間的成長が競技力の向上にもつながるような気がするし。
ほんまその通りやと思う。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE