二兎を追うものは一兎をも得ず。
脇目も振らず一心不乱に没頭する姿勢が昔からアスリートに推奨される風潮は強い。
そしてその傾向はヘッドコーチの世界とて例外ではないように思われる。
なによりも選手やスタッフとの関係性を重視するコーチ。
コート上の戦術、戦略が全てのコーチ。
それぞれが奥の深い道であるがゆえに、一度志したら他に目を向ける余裕はなくなってしまうのかもしれない。
しかし川辺は、二兎を追いかける。
選手、スタッフが意見を率直に言い合える、心理的安全性の高い組織。
確かな理論に裏打ちされた、高度な戦略の実践。
そして。
── ファイティングイーグルス名古屋のディフェンスは連携もスムーズだし、徹底が素晴らしいと感じたんですが、チームとしてはまずディフェンスを強調するという意識ですか。
そうですね。やっぱりディフェンスチームなので、自分たちでコントロールできるところは最善を尽くさないといけない、っていうふうにチームには言っています。例えば1日目にミドルピックをけっこうやられてしまった試合があって、2日目にはピックアンドロールディフェンスの質を上げたりとかマッチアップを変えたり、うまくスイッチで(エヴァンス)ルークにつくように仕向けたりっていうところをアジャストしたら、向こうのミドルピックの回数は1日目より増えてたけどFGパーセンテージは下がってる、っていう状況を作れたとか、そういう部分で、自分たちが最善を尽くすことでうまくいったケースは多いと思います。
── オフェンスの部分はどうですか。この辺は手応えがあるとか、この辺を改善していかなきゃいけないっていう部分は感じていますか。
トランジションで数的優位を攻めたい、とか、チームルールの中のどこでスマートショットを打っていくのか、っていうのはチームとしてけっこうできていて。でもまあ全てがディフェンスが良いときしかそれはなかなか出なくて、課題としてはハーフコートバスケットの共通認識。例えばバスケットは常に裏表だから、ディナイされたときに、ボールマンプレッシャーされたときに、どう今度は裏をついていくのか。5人の中の共通認識がまだゆるいので、それを振り返りで取り入れていってるような感じですかね。