もっとセルフィッシュな選手なのかと思っていた──
アルバルク東京の新戦力であるジャスティン・コブスはアメリカで生まれ育ち、カリフォルニア大学を経たあとはヨーロッパ拠点とし、プロ選手としてのキャリアを積み上げる。ラトビア、ドイツ、トルコ、フランス、クロアチアと各国プロリーグを渡り歩き、2019年よりモンテネグロのKKブドゥチノストでプレー。その年の夏、中国で行われたワールドカップでの最終戦に日本代表と対戦したのがモンテネグロであり、どこか馴染み深い。当時はまだアメリカ人だったコブスだが、翌年から帰化選手としてモンテネグロ代表となり、現在ワールドカップ予選を戦っている。
新シーズン開幕に向け、チームハイの平均18.3点で活躍するモンテネグロ代表戦のハイライト映像を見ていたら、1on1を仕掛けてゴールを狙うシーンが多い。コブス自身も「スコアリング・ポイントガード」と明言し、得点力が持ち味と言う。もっとセルフィッシュな選手なのかと思っていたが、開幕戦から球離れ良くまわりを活かすプレーで早くもチームケミストリーを発揮していた。
4試合を終えた時点で平均16.5点、5.5アシスト、3ポイントシュート成功率は43.8%の数字を挙げ、上々のスタートを切った。試合を終えたあとはチームメイトとも笑顔で会話を交わし、すでにチームの輪に溶け込んでいる姿が微笑ましい。
「1年目にも関わらず、チームメイトたちは本当に温かく迎えてくれたことで、自分の持ち味も発揮でき、スムーズにプレーすることができているよ。これからもっともっとケミストリーを高めて、勝利を積み重ねていき、チャンピオンシップ優勝に向かって一歩一歩進んでいきたい」
プロとなって9シーズン目、さまざまな環境で戦ってきたコブスは、「ゲームがどのように動いているかを見極める感覚も武器だと思っている。これまでの経験上ではあるが、試合中に感じるものがあるからこそ、チームメイトを活かすプレーもできる。今、誰が乗っているかを見極めてパスを出しつつ、自分としてもスコアを狙っている」というパフォーマンスを開幕戦から披露している。
ホーム開幕2戦目は9千人を超える観客を集めたアルバルク東京。モンテネグロもコロナ禍により、なかなか多くの観客を受け入れられる環境ではなかったことで、久しぶりの満員の雰囲気にコブスも興奮していた。「素晴らしい空間でバスケができたことがうれしく、とてもエキサイティングだった。ここが我々のホームコート。ファンに感謝し、多くの応援にこたえるプレーを見せてチームとして勝利を目指していきたい」と話し、今週末も続く群馬クレインサンダーズ戦で、今シーズン初の同一カード2連勝を目指す。
191cmのコブスとともにコートに立つ193cmの田中大貴とのガードコンビは、相手チームにとっては厄介な高さとなる。千葉ジェッツは原修太や佐藤卓磨がマッチアップし、モンテネグロ代表ガードと日本人選手たちの対戦も見応えがあった。群馬戦ではトレイ・ジョーンズやアキ・チェンバースがマークしてくると予想する。身長差のない相手に対し、コブスがどんなプレーを見せるのか、今から興味津々である。
文・写真 泉誠一