32歳のフェルプスはメキシコを皮切りに多くの国でプレーし、在籍したクラブは10を優に超える、いわゆるジャーニーマンと言っても差し支えない選手だった。2019-20シーズン途中に琉球ゴールデンキングスと契約して初めて日本に足を踏み入れたが、翌2020-21シーズンにその一員となってからは一貫して愛媛でプレー。どうやら本人にとって、愛媛は半ば安住の地となっているようだ。
「今シーズンのチームメートもすごく好きだし、コーチングスタッフもこの街も大好きで、第2のホームだと思っているし、自分のことを歓迎してくれるので気持ち良くプレーできる。このチームのためにプレーできるのであれば引退するまでここにいたいと思うし、とにかくこのチームが大好きという言葉しかありません」
チームに対する居心地の良さを感じつつ、どのような環境であろうとやるからには勝ちたいと思うのがアスリートの性。愛媛でプレーすることにやり甲斐だけでなく手応えも感じ、フェルプスは始まったばかりの新シーズンにワクワクしている。
「このチームでプレーオフに行けるという自信はあります。もちろんやるべきことはたくさんあるので、次につながる練習を毎日やって、毎試合チームケミストリーを高めていって、どんどん強くなりたいし、目の前の試合を大事にして勝っていきたい。昨シーズンは自分もケガがあって何試合か出ることができなかったんですが、何かが起こるというのはちゃんと理由があることで、チームが全員揃ってからは勝てるようになっていった。今シーズンも全員がヘルシーであることが一番ですが、どんなことがあっても戦えるチームを作っていきたいし、それができるチームだと思うので、本当に楽しみなシーズンです」
bjリーグのオリジナルチームであった大分・愛媛ヒートデビルズから経営権が譲渡され、Bリーグ発足と同時に単独フランチャイズで生まれ変わった愛媛。7シーズン目を迎え、開幕節第2戦は愛媛移転後最多となる2092人の観客動員を記録した。その試合でフェルプスが大暴れし、香川との四国ダービーを会心の試合運びで制したことは、地域に根差すクラブとして大きな転機になる可能性もある。
この試合、来場者に初めて配布されたTシャツでオレンジ色に染まった観客席はフェルプスの気分を高揚させたらしく、「次は3000人でお願いします!」と笑った。大学時代のコーチから「リングの上にはお金があると思え」と指導されたフェルプスは、今シーズンも愛媛のためにリングに向かってひたすら跳び続ける。そんなフェルプスの姿見たさに観客が増えていく未来も見えてきそうだ。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE