── 誰かに相談することはなかったのですか。
橋本 もちろんありましたよ。中でも先輩の(桜井)良太さんには1番相談したと思います。良太さんはいつも僕の気持ちを受け止めてくれるので、何でも正直に話すことができました。思えば自分の思いを1番強くぶつけたのは良太さんだったような気がします。「Bリーグより前からずっと北海道で頑張ってきた良太さんが今のレバンガのまま引退していくようなことがあってはならない。自分はそんな良太さんを見たくありません」とか後輩のくせにエラそうに(笑)。でも、それは本心だし、良太さんもそこはわかってくれていて、これからチームをどう変えていかなきゃならないかという話は2人でたくさんしました。
── その結果、少しずつチームが変わっていった手応えはあったのでしょうか。
橋本 ありました。本当に少しずつですけどみんなが前を向き出して、その変化が練習にも出始めました。
── 昨シーズン、佐古賢一さんがヘッドコーチに就任したことで「強くなるきっかけをつかめた」とおっしゃいましたが、そのきっかけとは具体的にどういったことでしょう。
橋本 これはあくまで自分の3年間に限った話になりますが、1年目、2年目と連続でヘッドコーチが変わったことはやはり選手として大変なことでした。でも、新しいヘッドコーチのバスケットにアジャストしていくのも1つの経験ですし、その中で自分たちはどうしたら強くなれるのかそれぞれが考える時間にもなりました。3年目に来た佐古さんはそういったみんなの気持ちをバーンと解放してくれたんですね。佐古さんはゲームの流れを読むこと、その中でいい流れをどうやってつかんで、どうやっていい展開にもっていくのかをすごく重視します。流れをつかむポイントはゲームの中にいくつもありますが、それをみんなでつかむためにはどうしたらいいのか、それを考えさせるのが佐古さんのバスケットだと思います。みんなに自由に考えさせるんです。大枠はあるにせよ、必要以上に決まり事は作らないし、こういうバスケをしなさいとか、しなければだめとかは言わない。その代わり、あなたのストロングポイントはどこですか?それを生かすためにはどうすればいいですか?みたいにまずは自分自身と向き合わせます。それを自分の頭でしっかり考えなさいというスタイルなんですね。
── なんとなくチーム全体がポジティブになっていく感じが伝わります。
橋本 そうでしょう(笑)。「昨日はあの選手がよかった、だけど、今日はこの選手が活躍したっていうのがレバンガのバスケットだ」って佐古さんが言うように1人ひとりが自分のいいところを磨いて、そこで貢献することを全員が意識して、今、頑張っている最中ですね。苦手なことって誰にでもあるじゃないですか。でも、ヘッドコーチから「そこは練習を通して少しずつ追いついていけばいい。それよりおまえのいいところを出してくれ」って言われれば、自分のいいところをさらに伸ばしたいと思うようになりますよね。自分の目標がチームの目標にもなって、どんどん信頼関係が深まっている気がします。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE