「若手とベテランの架け橋になれるように、オンコートでもオフコートでもチームを1つにできるようなコミュニケーションを取ること、チームが常に良い状況にあるようにということは意識していました。ベンチを見てもらえればわかると思うんですが、いわゆるベテランのおっちゃんたち(笑)も一緒になって騒いでくれたのは良いチームの証拠だと思います。自然とベンチが盛り上がるようになっていって、それはやっぱりそういう選手を集めた伊藤さんの力なのかなと思います」
選手としての能力と同等、あるいはそれ以上に人間性を重視してチームを編成した伊藤GMは、おそらくこういった謙虚な姿勢も評価した上で髙比良にオファーを出したのではないか。
そしてまた、フランチャイズプレーヤーという使命感についても「特になかったんですが(笑)」と髙比良は語るのだが、そこにはただ1人の選手として、1人の人間として髙比良を突き動していたものがあった。髙比良が長崎に入団を決めたもう1つの理由が、「じいちゃん、ばあちゃんが元気なうちに長崎でプレーを見せたい」というものだった。
「地元のテレビのニュースや新聞でも取り上げられますし、両親や親戚のグループLINEがあって、僕が活躍すればそこに僕も知らないような記事が次々と送られてくるんですよ。逆に活躍しなかったら両親から『……』みたいなLINEが来て(笑)。特にじいちゃんは入院したり施設に入ったりしていたんですが、僕がMVPを取ったりニュースや新聞に出たりしたときはものすごく元気な声で電話をかけてきてくれて、僕の活躍が身近な人たちのパワーになっているんだなと感じることもできました。地元だからというのではなく、そういった部分でやっぱり活躍しなきゃいけないというプレッシャーがありましたが、とにかく個人としてもチームとしても結果を出すことが一番の証明だと思って、そこにフォーカスしましたね」
純粋に選手としての成長を期したことが故郷に凱旋する結果となり、1人の人間としてもそれまで以上にバスケットに真摯に向き合った。そんな髙比良は、チームとしてのこの1年をどう振り返るのか、そして次の1年をどのように迎えるのか。
文 吉川哲彦
写真提供 長崎ヴェルカ