2月が終わる頃には、香川も含めて複数のクラブからオファーが届いていた。長崎に関しては「B3だし、とりあえず話を聞いてみよう」という程度に考えていた髙比良だったが、迷った結果、3月のうちに長崎移籍を決断する。
「伊藤さんのプレゼンがすごかったというのが一番です。Zoomだったんですが、最初にスタジアムシティプロジェクトについてパワーポイントで見させていただいて、もうその時点で『おぉ……』と声が出てしまいました(笑)。クラブハウスなどの環境もそのプレゼンに入っていましたし、僕が一番フォーカスしたかったスタッフに関しても、最初に中山佑介(ディレクター・オブ・スポーツパフォーマンス)というビッグネームがいきなり出てきて、このクラブは本気なんだなと思いました。初年度からこのチームでプレーするのは自分にとってすごく大きなチャレンジだし、地元を盛り上げるチャンスだと思いました」
髙比良の契約合意が発表されたのは2021年5月12日。B2のレギュラーシーズンが終了して間もない時期であり、その前に入団が発表されていた選手は数名のみ。Bリーグ全体のブースターを驚かせる選手獲得が本格化するのはその後のことだった。B1経験者との契約が続々と決まっていく中、髙比良は自身の出場機会を不安視することはなく、逆に「自分以外にどういう選手を獲るのかを伊藤さんに訊きました」と期待感でいっぱいだった。
「僕は実績も経歴もないし、ヴェルカの中では一番大した選手じゃない。凄い選手たちが入ってきて、言ってみれば僕は一番下からのスタート。そこからどれだけ上がっていけるか、どれだけチームから必要とされる選手になれるかということは、今までもそう意識してバスケットをやってきたので。(ジェフ・)ギブス、狩俣(昌也)さん、野口(大介)さんといったテレビで見ていたような人たちと一緒にできるのが楽しみでしたし、良いところは全部吸収できる、伸びしろは確実に僕のほうがあるという自覚もありました」
チームが始動すると、髙比良はギブス、狩俣とともにキャプテンに任命された。一見責任感が強そうに見える髙比良だが、「キャプテンとしての責任感はあまりなくて(笑)、プレーの部分ではジェフと狩俣さんが引っ張ってくれるだろうと勝手にイメージしていました」という。もちろん、チーム内で年齢的に中堅の髙比良が自身の果たすべき役割をしっかりと認識していたことは言うまでもないが、それでも「自分はキャプテンという感じではなかったです」と髙比良は謙遜する。