こうしてバスケットの魅力に気づいたHazukiは、かつて自身がそうであった経験も踏まえ、まだバスケットに詳しくないライト層がいかにホームゲームを楽しめるかという視点を大事にしている。バスケットはおろかチアダンスも初めてだった2020-21シーズンは、「足を引っ張ってはいけないので、先輩メンバーについていくのに必死でした」と本人も言うように、秒単位で決められているホームゲームのタイムスケジュールに沿って動くことに神経を使ったが、2シーズン目になると「余裕が出てきたというわけではないですけど、流れもわかってきて視野は広がったと思います」と言い、「お客様と一緒に会場の雰囲気を作っていくことができるようになってきた」という実感があるようだ。
「初めて来た方やバスケットはわからないけど来てみたという方が、試合を見ていて『何が起きているのかわからない』という気持ちは自分もわかるので、そういった方々に『バスケットも含めて楽しい空間だったね』と思っていただけるようにということは心がけています。アルファーズはMCさん、DJさん、ダンサーさん、アルファマンとエンターテイメント性が高いと思うので」
そういったホームゲームのエンターテイメント面を充実させていく中で、4月24日にはクラブにとって重要なマイルストーンとなる出来事があった。過去最高となる2865人の入場者数を記録したのだ。Hazukiがアルファヴィーナスに加わって2シーズン目の終盤に、ようやく100%収容が解禁。ホームゲームで初めて見る光景に、Hazukiは目を輝かせた。
「正面側の席が埋まることはあったんですけど、その日はコートエンドまでたくさんいてくださって感動しました。ディレクターのMinoriさんも普段から360°のお客様に楽しんでもらえるように考えてくれているので、前後左右にお客様がいて嬉しかったです。緊張は……いつもしているんですけど(笑)、その日に特別緊張したということはなくて、ワクワクした気持ちのほうが大きかったですね。どれだけ一緒に盛り上がってくれるかな、盛り上げていけるかなって。オープニングからの一連の流れの中でどんどんお客様が増えていって、控室に戻る度に『すごい人出だね!』ってメンバーみんなワクワクした感じでした」
観客の多さに緊張するどころか純粋に喜び、胸を高鳴らせるあたりがHazukiの天性のチアリーダー気質と言っていいだろう。どんな状況であろうと自らの役割にしっかりとフォーカスできるところにも、クラブはプロとしての資質を見出したに違いない。
文 吉川哲彦
写真提供:越谷アルファーズ