ハーフタイムの間には大きな動きが2つあった。1つ目は、折茂がTEAM 9に移り、比江島慎と田中大貴がTEAM LEGENDに加わる1対2の交換トレード。これは野口や桜井、田臥勇太らと最後に再びチームメートとなるのが最大の目的だったはずだが、平均年齢47歳で疲れを隠せないTEAM LEGENDが前半につけられた8点差を若い2人の力で盛り返す意味でも必要だったのだろう。
そしてもう1つは、 “折茂イジり” に関しては桜井並みに長けた朝山の「僕は佐古派です」発言に端を発する派閥間抗争の勃発だ。後半に備えてシューティング中の現役選手が折茂と佐古の元に順次呼び出されたが、川村卓也を除く全選手が「佐古派」を表明。こうして10歳以上離れた後輩たちにイジられるところも現役時代から変わっておらず、折茂の人柄の為せる業と言っていいだろう。多くの後輩が「最初は怖い人かと思っていた」と証言するが、その後に必ず「気さくなひと」「面倒見が良い」「かまってちゃん」といった言葉が続く。折茂は愛嬌に満ちた人物なのだ。なお、「かまってちゃん」というコメントの主は五十嵐であることを申し添えておく。
そんな10歳以上離れた選手たちに囲まれ、折茂は得点ペースを伸ばす。第3クォーターはドライブやポストアップからのファウルドローンで得たフリースローなど、多彩な得点パターンを披露して11得点。前半と合わせて23得点となり、中継の解説を務めた橋本竜馬と実兄・輝文氏も「30点じゃなくて40点までいってほしいですね」と、期待する得点数を上方修正した。
第4クォーターには、試合前に「出ません」と明言していたはずの東野智弥JBA技術委員長がコートイン。折茂にとっては同期であり、トヨタ自動車時代はアシスタントコーチと選手という間柄でもあった。1分23秒の出場で放った3ポイントは2本ともエアボールとなり、いずれもその直後に折茂の3ポイントが炸裂。ある意味、引き立て役としては大きな仕事をやってのけた。
最終的に、折茂はこのクォーターでチームの21得点中19得点を叩き出し、比江島と田中の活躍で一度は逆転に成功したTEAM LEGENDを、TEAM 9が80-76と4点差でかわした。もちろん周りがボールを集めたとはいえ、時に激しいフィジカルコンタクトを受け、時にダブルチームで守られた52歳が34分20秒もの間コートに立ち、3ポイント6本を含む42得点。折茂武彦は最後まで折茂武彦だった。