4月14日、島根スサノオマジックのチャンピオンシップ進出が確定した。28勝32敗(西地区5位)で終えた昨シーズンから一躍2位(5月4日現在40勝14敗)への大躍進である。確かに今季の島根は開幕前から注目チームの一つに挙げられていた。日本を代表するシューター金丸晃輔、得点力とコントロール力に定評があるポイントガード安藤誓哉、昨年の東京オリンピックでオーストラリア代表メンバーとして活躍したニック・ケイの加入、ポール・ヘナレ新ヘッドコーチの手腕も期待され、「台風の目に成り得る」の声が聞かれたのも事実だ。しかし、いかに有力な選手が入ってこようと直ちに強いチームが出来上がるわけではないというのもまた事実。新しい戦力を花開かせるためには “迎え入れる力” が必要となる。島根で4シーズン目を迎えた阿部諒は「それは自分もよくわかっています」と答えた。6番目の選手としてコートに出る阿部が常に心掛けているのは「チームを勢いづけたいとき、あるいは悪い流れを変えたいとき、しっかり役に立てる選手になること」だという。「まずはディフェンスですね。自分の1番の武器はディフェンスだと思っているのでそこでは誰よりも貢献したいです」。B2時代の島根でプロ生活のスタートを切り、昇格したB1では『なかなか勝てない』もどかしさも味わってきた。今シーズンの快進撃と初めてのCS進出について尋ねると「ものすごくうれしいです」の答えが返ってきたのは当然だろう。が、真に目指すものはその先にある。どんな展開になろうと絶対あきらめない。CSでは必ず爪痕を残したい。「今シーズンの島根はそれができるチームです」と胸を張った。
力が足りないなら努力するしかない
阿部は自分のことを “突出した選手” と思ったことはないという。
「バスケを始めたのは幼稚園の年長のときです。僕は4人兄弟の末っ子で3人の兄貴がみんなバスケットをやっていたので、ごく自然な流れでした。バスケは楽しかったですよ。できることならずっと続けたいと思ってましたね。ただ全く大した選手じゃなかったです」。地元(千葉)の強豪・市立船橋高校に進んだのは「同じ市原市立辰巳台中学の出身だった近藤義行監督(当時)が前から自分を気にかけてくれていたことがきっかけ」であり、県内外から集まる有力選手の顔ぶれに驚いた。「その中で自分の力は本当に劣っていたと思います。3人の兄貴たちには今でも『あのころのおまえのディフェンスはめちゃくちゃザルだったな』と言われるぐらいで(笑)」
しかし、本人が言う『突出したものがない選手』には突出したものがあった。バスケットに対するまじめさ、謙虚さ、向上心。何より『あきらめない』という才能。入部当初は「周りのレベルが高すぎて自分が何をやればいいのかさえわからなかった」という阿部は、それでもあきらめることなく目の前の課題にコツコツ取り組んでいった。