勝っても負けても同じように続ける信念
1月の大阪戦でオタ芸を披露し、コート上で見せる寡黙な吉井の姿とは違った一面を垣間見せた。アルバルクファンを沸かせ、その距離は縮まったはずだ。BリーグのSNSで拡散されたことで、アルバルクファン以外からも大きな反響があったことに吉井自身も驚いている。その一方で、「そういうキャラが先行してしまうと僕的にはあまり良くない」と複雑な心境を抱いていた。プロ選手である以上、本業のバスケで目立つことが先決であり、吉井自身もそこを目指している。しっかりと地に足をつけ、小さくても高みを目指して一歩一歩前進している姿こそ、吉井の本来のキャラである。
コートに立てば全力で体を張り、ベンチでも「いつ試合に出ても良いように、個々がどういうバスケをしているかを話し続けたり、コートで戦っている選手に声をかけたり、目に見えないところで少しでも良い影響が与えられればいいな」と勝利のために全力を注ぐ。A東京に入団し、ハイレベルなバスケに身を投じてきたことで見えてきたチームの強さがあった。
「勝っても負けても、常にスタンダードが変わらないです。負けたから何かを変えるわけではなく、勝ったから継続するわけでもない。勝っても負けても同じように続ける信念を肌で感じています。アルバルクが目指すレベルを知ってしまった今、これまでのバスケに対する考え方が未熟だったと感じています」
すでにチャンピオンシップ出場を決めたA東京にとって、発展途上の吉井が6人目にしっかりと食い込んでくるような成長が期待される。チャンピオンへ返り咲くための重要なピースにだってなり得る。
「レギュラーシーズンもまだ終わっていませんし、ここから1つでも多く勝ちを積み重ねていけば、良い雰囲気のままチャンピオンシップに臨めると思っています。目の前の1試合1試合から、自分自身もそうですし、チーム全体として気を抜くことなく、全員でハッスルし続けて、勝ちをもぎ取っていきたいです」
アルバルク東京 #8 吉井裕鷹
勝っても負けても揺るがないアルバルクスタンダード
前編:常日頃の練習で少しずつ信頼を勝ち取ってきただけ
後編:常にどんなポジションでもプレーできるように準備
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE